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朝から体に触れるものすべてが湿っている。きのう東北北部が梅雨入りし、列島の首あたりまでが水につかる図となった。それは理屈の上で、むろん雨ばかりとは限らない。これからの晴れ間は千金だ▼作家の石坂洋次郎が、この時候を随筆に残している。〈まったく、天によくこれほどの蓄えがあったものだと思うばかり、降りみ降らずみ、雨の絶え間がない。そして青空というものがどんなものだったか、記憶があやしくなりかけるほど、低く鉛色の空が垂れこめた日々がつづく〉▼「青い山脈」の作者が描く雨期はいささか大仰だが、50年前はこれが常だったのかもしれない。そんな梅雨らしい梅雨に、とんとごぶさたしている気がする。どうも、寒暖ばかりか乾湿の季節感も年ごとに薄れていまいか▼わけても今年は、大雪、日照不足、異常低温と不順が続く。温暖化の罪がいかほどかはさておき、天は度し難い。農作物や水道水のためにも、梅雨くらい昔ながらに、月並みに、災いがない程度に仕事をしてほしい▼とかく雨は嫌われるが、じとじとが深いほど梅雨明けの喜びは大きい。「首から下」が水っぽいから北海道の価値が高まる。憎まれ役あっての爽快(そうかい)である。〈空港に梅雨置き去りのカナダ行〉安田瑛子▼オフィスも商店も乗り物も、昨今の都市生活はすっぽり除湿の中にある。梅雨知らずで過ごす人もいるだろう。しかし暑さ寒さと同様、暦通りの湿気が体にひどく悪いとは思えない。除いて避けるばかりではなく、たまには外気にじっとり包まれるのもいい。