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通常国会が終わった。会期末まで、民主党の強引な運営ぶりが際だった。きのうは自民党などが提出した首相問責決議案の採決もしなかった。
与野党それぞれに理屈はあろうが、政権交代時代の新しい国会の姿を見せるには至らず、大きな宿題を残したことを銘記すべきである。
参院選に走り出す前に、成立しなかった法案に目を向けておこう。
温室効果ガス排出量の「25%削減」を明記した地球温暖化対策基本法案は廃案になった。製造業派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案は継続審議だ。「ネット選挙解禁」の公職選挙法改正案は提出すらされなかった。
政府提出の法案の成立率が過去最低に落ち込むなか、どうしたことかと目を疑うひとつが、地域主権改革関連3法案だ。参院で先に可決されたが、衆院で継続審議になった。
地域主権改革は政権交代の目玉政策だったはずだ。霞が関の各省と二人三脚で進んだ自民党政権の「地方分権」を、脱官僚依存の鳩山前政権は「地域主権」と呼び改め、旗を振った。
住民に近い自治体に権限も財源も移すため、各省の抵抗を打ち破る。こう宣言して、大阪府の橋下徹知事らを入れた地域主権戦略会議を司令塔に、改革の献立を練ってきた。
関連3法案は、そのほんの頭出しに過ぎない。自治体の仕事のやり方を法律で縛る「義務づけ」の廃止などは、ごく一部でしかない。それでも、自治にかかわる政策を企画段階から政府と地方代表が話し合う「国と地方の協議の場」法案などは評価できた。自治体側の長年の要望でもあり、地域主権改革の初めの一歩といえた。
自民党も公明党も「協議の場」には基本的に前向きだ。それを通さなかったのは、政府の自治体に対する背信行為だ。速やかな成立を求める。
同時に気になるのは、6月中に予定されていた政府の地域主権戦略大綱も先送りされそうなことだ。大綱は地域主権改革の全体像を描き、2、3年後を見すえた方針を示すものだ。
そこには、国と地方のあり方を根幹から見直す取り組みも多い。ひも付き補助金を廃止して省庁横断型の一括交付金にすることも一例だ。
さらに大綱では「国の出先機関の原則廃止」を確認し、工程を年内に策定する方針も書くはずだった。こうした各省との摩擦が大きい大綱の閣議決定が遅れれば、それだけ各省が巻き返す余地も生まれるのが気がかりだ。
首相交代に伴い「菅カラーを出したい」との考えもあるのかもしれない。だが、大綱づくりをしてきた地域主権戦略会議には、菅直人首相も仙谷由人官房長官も入っていた。理由を示さないままの大綱の先送りは解せない。今月内の閣議決定をめざすべきだ。
もはや角界の当事者たちに、自浄能力は期待できないだろう。
親方2人が便宜を図った観戦券が暴力団に渡っていた問題から半月余り。今度は賭博問題である。
私たちはこれまで、日本相撲協会の公益法人としての適格性に疑問を投げかけてきた。ここまで不祥事が続いては、税制の優遇措置を受ける公益法人の資格はないと言わざるを得ない。
武蔵川理事長は「うみは全部出す」と言う。だが、それが実現できるまで、公益法人の資格はいったん返上するべきだ。
野球賭博がしばしば暴力団の資金源となることは知られている。にもかかわらず、大関の琴光喜関はそれに手を染めた。勝ち金数百万円の支払いを求め、逆に元暴力団関係者から脅され、口止め料として300万円を支払ったという。違法行為のあげく、日本人最高位にある力士が、反社会的勢力を支えたことになる。
協会の調査によると、他に28人が野球賭博に関与し、中には力士だけでなく、指導的立場にある親方も含まれているという。汚染は構造的だ。
ところが、協会は調査当初、過去5年間の賭博経験を申告した者は情状酌量で厳重注意にとどめる、としていた。身内に甘いにもほどがある。琴光喜関の賭博への関与も協会の聴取では見抜けなかった。危機管理能力を著しく欠いている。
力士暴行死事件や大麻問題など、角界ではここ数年、不祥事の連鎖が止まらない。協会は問題が発覚するたび、再発防止と体質改善を誓ってきたはずだが、泥沼はむしろ広がる一方だ。
力士出身者が主体の協会執行部のありようにも深い病根がある。常識とかけ離れた金銭感覚や価値観、反社会的な組織や人とのつきあい。角界に身を置き続けたために問題を問題と感じることもできなくなっているようだ。
不祥事が起きても、外部理事2人と監事がなんとか対応を下支えしているのが現状で、力士出身の幹部には事態の深刻さが理解できていない。
こんな人たちに「暴力団と手を切れ」と主張してみても、容易ではないだろう。ファンへの裏切りもいいかげんにしてもらいたい。
もし角界を立ち直らせようとするのであれば、公益法人の資格を返上した上で、理事長は組織運営にたけた人物を外部から招き、外部理事の割合も過半数にする。外からの目が届きにくい「部屋」を中心にした独特の角界構造も徹底的に見直す。それくらいの改革をせねば、同じ過ちを重ねるだけだ。
川端達夫文部科学相は相撲界が「再スタートの瀬戸際」だと述べた。この認識は甘い。とうに土俵から落ちている。協会を一度解体するくらいの荒療治をしなければ再生は無理だ。