HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 16 Jun 2010 02:13:11 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:新貸出制度 日銀の裁量権拡大に:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

新貸出制度 日銀の裁量権拡大に

2010年6月16日

 日銀が成長支援を大義名分に新しい貸出制度の創設を決めた。この制度は日銀が金融機関に対して裁量的に低利資金を配分する点に本質的な問題がある。天下り開拓が真の狙いか、と疑われる。

 銀行は家計から預金を集めて企業に貸し出す。その際の預貸利ざやが利益の源泉になる。預金に支払う金利が銀行のコストである。 ところが今回の制度では、日銀が銀行に預金金利を実質的に下回る政策金利(現行は年0・1%)で大口資金を貸し出す。銀行は資金コストが減り利益が増えるので当然歓迎している。

 どの銀行も日銀から低利資金が得られるかというと、そうはなっていない。日銀は「成長基盤の強化に役立つ」ような融資をする銀行に対象を絞った。一見もっともらしいが、一方で、資金使途は研究開発費をはじめ何でもありといえるほど広くしている。

 つまり、表向き「成長支援」という理由になっているが、ひと皮むけば、貸すか貸さないかは日銀のさじ加減一つなのだ。当事者以外には分からない「密室運用」と言ってもいい。それは、何より日銀に都合がいい仕組みだ。

 日銀が裁量的に資金配分することによって、銀行に「貸し」をつくれるからだ。銀行から見ると、日銀の胸三寸で利益が大きく変わるのだから、日銀に足を向けては寝られない関係になる。

 これは、かつて日銀が実施していた「窓口指導」に似ている。日銀は各行の貸出増加額を厳密にコントロールして、指導を守らない銀行には資金の引き揚げなど厳しい「懲罰」を科した。

 銀行にとっては有利な日銀資金をどれだけ得られるかが経営の重要課題になり、その結果として日銀からの天下りを受け入れていた事情がある。日銀と銀行の不明朗な癒着は一九九〇年代末には「日銀不祥事」として現職課長の逮捕事件にまで発展している。

 「窓口規制」は金融自由化進展とともに廃止された。それに伴い日銀の銀行に対する優越性も失われ天下り先が細くなった。

 今回の貸出制度は「成長支援」という衣をまとってはいるが、本質は日銀による裁量的資金配分の復活である。銀行に対する優越性を取り戻して、天下り拡大を狙ったように見える。

 百歩譲って、低利資金供給による多少の金融緩和効果があるとしても、それなら市場の目に見えない密室運用ではなく、堂々と緩和政策の王道に戻るべきだ。

 

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