国連安全保障理事会がイランに対し、四度目の制裁決議を採択した。ウラン濃縮、核兵器開発の疑惑が晴れないままでは圧力もやむを得ない。各国は制裁を実行し、核開発に歯止めをかけたい。
イランは医療用、さらに将来の電力不足に備えるとして、平和的な核活動の権利を主張している。
だが、濃縮度を20%に高めたウラン生産を開始し、欧米諸国は「民生用にこのレベルは必要なく、軍事転用もできる」と指摘する。国際原子力機関(IAEA)の試算だと、低濃縮ウラン(濃縮度3・5%)の保有量は約二・四トン。まだ技術力は低いが、濃縮度90%以上に高めれば二個の核爆弾が造れる。
常任理事五カ国が制裁決議を急いだのは、中東全体への波及を警戒したからだ。
イランがもし核武装すれば、湾岸諸国に核軍拡競争が広がる懸念がある。敵対するイスラエルがイランの核施設爆撃を強行するという見方も消えない。
追加制裁は、核とミサイル開発に関する資金と物資の流れを遮断する措置を新たに講じた。イランに出入りする船舶や航空機の貨物検査も強化される。政権の支持基盤である「革命防衛隊」の関連団体などの資産凍結もする。
石油、天然ガスと資源大国であるイランをめぐっては、各国の思惑が交錯した。だが、追加制裁に消極的だった中国とロシアも、米が要求した強い制裁案を緩和することを条件に賛成に回った。
非常任理事国の日本は決議に賛成した。核開発中止を再三求めたが拒否され、制裁同調は避けられない選択だったといえよう。
ただ、今回は全会一致ではなかった。イランの低濃縮ウランの国外搬出を仲介するブラジルとトルコが、制裁に反対したからだ。米国が「時間稼ぎをさせるだけだ」と仲介案を拒否して決議採択となったが、安保理の足並みの乱れは制裁の実効性に不安を残した。
イランのアハマディネジャド大統領は決議を「価値がなくゴミ箱に捨てるだけ」と拒否。国内ではイスラム体制のあり方をめぐり保守、改革派が対立するが、国民の多くは核開発を当然の権利として支持しているという。
米ロ両国が新しい戦略兵器削減条約に調印するなど、世界は曲折を経ながらも核軍縮、不拡散に進んでいる。イランがこの潮流に逆らえば、孤立はさらに深まり、国民の暮らしも厳しくなると理解すべきだ。
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