HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 14 Jun 2010 21:13:38 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:JAL再建 神風頼みではいけない:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

JAL再建 神風頼みではいけない

2010年6月14日

 会社更生手続き中の日本航空(JAL)は二〇一一年三月期決算で営業黒字に転換する見通しという。人員削減などリストラ効果が出るためだが、近く策定する更生計画に手を抜いてはならない。

 主要子会社を含め総額約二兆三千億円の負債を抱えて一月十九日に倒産した同社は今期、三百億円以上の営業赤字になるとみられていた。半年もたたないうちに黒字に変わったのは合理化と景気回復のためだ。

 不採算路線からの撤退や供給座席数の削減などが奏功した。これに四月以降の旅客需要の回復が後押しした。本業での収益がプラスになるのは、確かに朗報だ。

 だが業績全体と経営実態を冷静に見れば、楽観論は吹き飛ぶ。

 同社は現在、グループ全体の従業員約五万二千人を約三万六千人まで減らす人員削減を実施中だ。当面、特別早期退職や定年退職などで六千人以上の削減を実現させる方針だけに、退職費用は大幅に増える。その結果、最終利益は巨額の赤字となろう。

 経営も複雑だ。裁判所が指名した管財人である企業再生支援機構が主導権を握っている。また前原誠司国土交通相の肝いりで就任した京セラ名誉会長の稲盛和夫会長が経営全般を管轄し、生え抜きの大西賢社長が執行役となる。「チーム一丸」と強調するが経歴や思想の差異を埋めるのは大変だ。

 再建は時間との競争である。裁判所へ提出する更生計画は当初の六月末から八月末に延期された。同社は「再建計画をもっと深掘りするため」と説明している。

 実態を見れば金融機関などへ説得力のある再建計画を作るには、経営陣の意思疎通と社内に危機感を徹底させる時間として二カ月間が必要だったのだろう。

 更生計画は三年間の再建期間を経て黒字経営を確立し、債務を確実に返済し、競争力のある航空会社に立て直すことが目的だ。

 再建では支援機構の出資や日本政策投資銀行の融資など合計一兆円規模の公的資金が投入される。大型機から中・小型機への機材更新などに使うとしているが使途の説明が不可欠である。

 一時的な業績回復を下敷きに更生計画を作ってはならない。

 国内外四十五路線から撤退する方針だがさらに強化も必要だ。世界的な航空連合(アライアンス)やアジアでも台頭する格安航空会社(LCC)への対応など、成長戦略を備えた将来像を国民の前にきちんと示してもらいたい。

 

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