亀井静香金融・郵政改革担当相が辞任した。連立政権を組む民主党が参院選の実施を急いで、国民新党が求める郵政改革法案の採決を先送りしたためだ。選挙事情を優先した茶番劇にしか見えない。
民主党と国民新党は菅直人内閣の発足にあたって「郵政法案の速やかな成立を期す」との連立合意を交わしていた。本来であれば、今国会の会期を延長してでも、十分な法案審議を尽くして採決に臨む姿勢が筋であったはずだ。
ところが、菅内閣発足後の各社世論調査で60%を上回る高い内閣支持率があきらかになった。これをみて、民主党内では「支持率が高いうちに参院選を実施したほうが得策。国会を延長すれば、どうなるかわからない」という声が高まった。
郵政改革法案の審議と採決を次の臨時国会に先送りしたのは、もっぱら世論調査結果に引きずられて、選挙の都合を優先した民主党側の事情によるものだ。
そもそも鳩山由紀夫前内閣のときから、民主党と国民新党の連立政権は郵政改革法案について、誠実な国会論議を重ねようという姿勢が感じられなかった。それは郵便貯金の預入限度額を二千万円に引き上げる一方、それが日本郵政の経営にどんな影響を及ぼすか、将来見通しを示していない点に象徴的に表れている。
その揚げ句に首相交代で支持率が上昇したら、国会審議はさておき参院選では、政権はどんな政策を実現しようとして、どう国民に説明するのか、道理が立たない。政治の基本がなおざりにされているのである。
その限りでは、審議を求めた亀井氏が閣僚を辞任するのは分からなくもない。しかし、こちらも底が割れている。亀井氏は辞任するが、国民新党は連立を離脱せず、しかも後任大臣に自見庄三郎幹事長を推した。
これでは単に、閣僚の首を国民新党の中ですげ替えただけだ。形ばかりの辞任である。国民新党にすれば「政権内にとどまっていなければ政策を実現できない」という大義名分があるかもしれないが、野党になっても法案に賛成票を投じればいい話である。
つまるところ、民主党は高い支持率を頼みに選挙に走って政策論議を犠牲にした。国民新党も郵政法案が最優先かと思いきや、なにより政権に執着する姿勢があきらかになった。
参院選では、政策実現を唱える両党の基本姿勢が問われる。
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