HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 12 Jun 2010 23:13:47 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 1 東京新聞:たっぷりの鰹(かつお)節でだしをとったみそ汁を口に含む。具…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年6月13日

 たっぷりの鰹(かつお)節でだしをとったみそ汁を口に含む。具は豆腐でもわかめでも何でもいい。立ち上る香りを吸い込むと、この国に生まれて良かったなと感じることがある▼「食」はそれぞれの国や地域に根付く文化そのものだ。価値観の違う人たちが自らの正義を掲げて真っ向から否定すれば、大きな摩擦が起きるのは必然だろう▼古式捕鯨発祥の地である和歌山県太地町では、沿岸小型捕鯨を続けているほか、入り江に追い込む漁法などで年間千頭以上のイルカを捕獲、多くを食用にしている。この漁を厳しく批判した米映画「ザ・コーヴ(入り江)」の日本公開が近づく中、上映中止を決める映画館が出ているという▼「反日的映画」と批判する団体が抗議活動を予告、上映予定二十六館のうち、三館が中止を決めた。実際に抗議活動が行われる前に中止したのは「何かがあってからでは遅い」という映画館の判断のようだが、自主規制は残念だ▼実際に映画を見なければ、どこに問題があるのか批判することもできない。上映中止を求める言論の自由は保障されるべきだが、表現を封殺する権利はだれにもない▼この映画は捕鯨問題や食文化、はてはドキュメンタリーの方法論など多くのことを考える材料になりそうだ。小さな「文明の衝突」から学ぶべきことは多い。上映をやめる映画館はこれ以上、増えてほしくない。

 

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