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黒いスカーフの女性が屋上で叫んでいる。1年前、テヘランで撮られた写真である。イラン大統領選で保守強硬派の現職が勝ち、反体制派の怒りは収まらない。昼は街頭で、夜は窓や屋根から「独裁者に死を!」の声が響いた▼世界報道写真展が東京都写真美術館で始まった。応募10万点から大賞に選ばれた「屋上の抗議」。撮ったイタリア人カメラマンは入国3日目に拘束され、それまでの写真を消されてしまう。釈放後、当局の目を盗み、夕闇に叫ぶ民衆を超高感度でとらえた▼「動き」の乏しさに、審査員の意見は割れたという。票を入れたニューズウィーク日本版写真部長、片岡英子さんが語る。「叫ぶ彼女たちが背負った人生までを写した。ネット上で消費され尽くす写真が多い中、もっと知りたいと思わせる力がある」▼報道写真の真価は、同時代を広く伝え、長く残すことだろう。入選作には、空爆で死んだパレスチナの少女のような一目瞭然(りょうぜん)もあれば、大賞のように、何だろうと思わせて引き込む絵もある。いずれも、シャッターを押さなければ時に埋もれたはずの日常だ▼一発を狙う写真家たちが、アフリカ大陸の端で競っている。娯楽の域に収まらないサッカーのワールドカップ。とりわけ南アフリカでの開催は、それ自体が巨大な被写体である▼大会の初得点は地元チームがたたき込んだ。黒人と白人が共に狂喜する様は、お祭りに備わる融和の力を映す。この世界、居間で試合を楽しめる人ばかりではないけれど、プロの感性と技が切り取る一枚を待ちたい。