HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38002 Content-Type: text/html ETag: "cff6e-1636-119d8480" Expires: Fri, 11 Jun 2010 03:21:39 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 11 Jun 2010 03:21:39 GMT Connection: close 役員報酬 大衆迎合的な個別開示の強行 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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役員報酬 大衆迎合的な個別開示の強行(6月11日付・読売社説)

 役員個人の報酬額まで開示させるのは、行き過ぎだろう。

 金融庁が上場企業に対して、報酬が1億円以上の役員の氏名や報酬額を開示するよう義務付けた。

 3月期決算企業の場合、該当する役員名と報酬額を記載した有価証券報告書を、今月中に公表しなければならなくなった。

 情報開示の充実は大切だ。しかし、プライバシー保護の点で課題も多く、日本経団連など経済界も強く反対している。実施の是非について事前に論議が尽くされたとは言いがたい。金融庁は開示義務付けを見直すべきだ。

 これまでは、役員全員の報酬総額を開示すればよかった。だが、欧米発の金融危機で、高額な役員報酬が問題視されたことや、欧米ではすでに実施している国が多いことから個別開示に踏み切ったと、金融庁は説明している。

 欧米の金融機関は、役員が高額報酬欲しさに、利益率は高いがリスクも大きい投資に走り、危機を招いた。役員報酬の業績連動が極端すぎる点が問題だった。こうしたことは、ほとんどの日本企業には当てはまらない。

 報酬の水準も違う。米国の上場企業の最高経営責任者(CEO)は、平均390万ドル(3・5億円)で、1000万ドル(9億円)を超える企業が300社もある。日本の上場企業は、役員報酬の平均が2500万円にすぎない。

 資生堂が3人の役員報酬を自主開示し、社長ら2人が1億円以上だった。大企業のトップクラスなら1億円以上もいるだろう。

 チェックすべきは、会社の規模や業績に比べて報酬が異常に高すぎ、株主の利益を損なっていないかだ。それなら、従来の総額開示で、事は足りる。

 報酬額という個人情報を、不特定多数の人がネットで簡単に見られる有価証券報告書に載せることの副作用が心配だ。例えば犯罪などの助長である。

 所得税の「長者番付」が廃止されたのは、振り込め詐欺などの犯罪や、嫌がらせの標的にされる例が後を絶たなかったためだ。同じ(てつ)は踏まないだろうか。

 金融庁が今年2月、個別開示案を示した際、意見募集に多くの反対意見が寄せられた。だが、亀井金融相は「世間に知れて困るなら報酬を下げればよい」などとして、猶予期間も設けず実施した。

 あまりに強引かつ拙速だ。これでは、大企業たたきで喝采(かっさい)を得ようとする、ポピュリズム(大衆迎合)政治そのものではないか。

2010年6月11日02時07分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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