HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Thu, 10 Jun 2010 22:15:15 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:新中国大使人事 民間の新風を外交にも:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

新中国大使人事 民間の新風を外交にも

2010年6月10日

 政府は宮本雄二駐中国大使の後任に丹羽宇一郎伊藤忠相談役(71)を起用する方針を固めた。民間人の知識、経験を外交に生かす新しい試みだ。政権交代に伴い外交の在り方を変える機会にしたい。

 主要国の特命全権大使は外務官僚が、ほぼ独占してきた。中国大使への民間人起用は初めてだ。

 丹羽氏は名古屋市出身。名古屋大法学部卒業後、伊藤忠商事に入り一九九八年に社長に就任し会長を経て今年四月から相談役になった。政府の地方分権改革推進委員会委員長など公職も務め「日中韓賢人会議」のメンバーでもある。

 民間人の大使起用は米国などでは珍しくないが日本では例外だ。これは自民党一党支配下の外交が外務官僚が筋書きを作り、政治家がそれを演じる形で進められてきたことに根本原因がある。

 対中外交では一九九二年の天皇訪中を当時の橋本恕(ひろし)中国大使が政府、与党内の反対論を説得する形で実現させたのが代表例だ。

 その後、小泉純一郎首相が外務官僚の懸念を顧みず靖国神社参拝を続けた例はあるが、おおむね官僚主導の外交が続いてきた。

 ところが、昨年の政権交代で民主党が「政治主導」を掲げ政治家が「用意したペーパーも読まない」(外務官僚)時代になった。自民党とのパイプで外交をお膳(ぜん)立てしてきた官僚は政権に「つてがない」と嘆き外交が停滞した。

 当初、官僚を敵視した民主党政権の罪も大きいが、根本的な解決には主要国の大使を含め政権の意向を反映できる人事で真の政治主導を実現するほかないだろう。

 対中外交は国交正常化前から民間が政府を主導する形で関係改善を進めてきた歴史がある。五年も首脳往来が途絶えた小泉時代も経済の交流が日中関係を支えたのは記憶に新しい。民間人を大使に起用する国としてふさわしい。

 企業の利益を求めてきた財界人が大使になれば国益のかかる外交の交渉力が弱まるという声もある。しかし、ビジネスでは社運をかけた交渉力が培われたはずだ。一企業の立場を離れた財界人が外交の現場で、それを生かすなら国益を損なうとは思えない。

 今後の日中関係は互いの経済的利益を大きく伸ばし、これをてこに国益の衝突を回避する知恵が問われる。海洋資源開発をめぐる東シナ海の対立は典型的な例だ。

 経済の相互利益で政治対立を緩和する。経済のわかる大使こそ大役にふさわしいのではないか。

 

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