七十年以上、飲食も排せつもせずに生きているヨガ聖人がインドにいるという。人は水分を取らずに一週間と生きていられない。医学的にはあり得ない話で、裏に何かありそうだと疑うのは自然だろう▼インド国防省は四月下旬、ヨガ聖人プララド・ジャニさん(82)を病院に十五日間缶詰めにして、二十四時間態勢で観察した。驚いたことに、ジャニさんは一滴の水も飲まずトイレにも行かなかった。神経生理学的な検査を重ねても脳や内臓などには異常はなかったという▼洞窟(どうくつ)で隠遁(いんとん)生活を送るジャニさんは幼いころ、ヒンズー教の女神の祝福を受け、特殊な能力を授かったと語っているそうだ。にわかに信じ難いが、日光をエネルギー源としている可能性もあるとの仮説を述べる学者もいた▼科学的に説明できないことなど、世界にたくさんある。ジャニさんのような人が存在する可能性もひょっとしたらあるのかもしれない。でも、ちょっと待ってほしい▼かつて、オウム真理教の教祖がやった“空中浮揚”を思い出す。わずかに跳び上がっただけの写真が、若者たちに超能力を信じさせ、人生を大きく狂わせた▼神秘的な力が人を幸福にするとは限らない。インド国防省が調査を始めたのも「謎が解明できれば兵士が生き延びる方法などに応用できる」という理由だ。戦争に使われるなら、超能力なんかない方がいい。