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菅内閣発足 国家戦略を明確に示す時だ(6月9日付・読売社説)

 迷走と失政を重ね、国民の期待を失望に変えた前内閣の(てつ)を踏んではなるまい。その政策と政治手法を大胆に転換する決断が求められる。

 菅内閣が8日、発足した。

 菅直人首相は記者会見で、経済運営について「経済、財政、社会保障を一体で強くしていく」と改めて強調した。外交面では「日米同盟を基軸とする原則は、しっかりと続ける」と明言した。

 ただ、こうした説明だけでは、菅首相がどういう日本を目指し、そのためにどんな具体策を講じるのかは明確でない。まず、骨太の国家戦略を明示してほしい。

 ◆首相官邸を機能させよ◆

 菅首相が閣僚・党役員人事を通じて、「小沢支配」排除の姿勢を打ち出したことは、民主党への支持を回復させ、「新しい政治」への期待を高めている。

 菅首相は野党時代、政府を追及する能力に定評があったが、鳩山内閣の国家戦略相や財務相としての実績は今ひとつだった。今後は首相として、着実に成果を上げなければ、世論の支持も長続きしないだろう。

 2007年以降、首相が毎年交代している。こんな不安定な状況では、財政再建や社会保障制度見直し、地方分権などの抜本改革は望めない。他国の首脳との信頼関係も築けず、国際社会における日本の存在感は一層低下しかねない。

 内閣の要の官房長官には、仙谷由人国家戦略相が起用された。

 前内閣は、「政治主導」を標榜(ひょうぼう)しながら、肝心の首相官邸が機能しなかった。鳩山前首相は指導力を発揮せず、平野前官房長官も総合調整役を果たせなかった。

 官僚も、「政治家から指示を受けるまで、自分からは動かない」という守りの姿勢に陥った。

 菅・仙谷コンビは、この反省を踏まえ、官僚機構を使いこなし、節目では首相官邸が決断を下す体制を構築する必要がある。

 与党との連携も重要だ。前政権では、内閣の方針が小沢一郎前幹事長に覆され、「政策決定の内閣一元化」は有名無実化した。

 それを改めるには、首相や仙谷長官と、枝野幹事長や、公務員制度改革相兼務の玄葉政調会長らとの緊密な調整が不可欠だ。

 当面なすべきは、参院選に向けて、昨年の衆院選の政権公約を大幅に修正することだ。政権公約は子ども手当、高速道路の無料化などバラマキ政策に満ちている。

 ◆税制で与野党協議を◆

 野党の自民党が消費税率の10%への引き上げを参院選公約に盛り込む方向なのに、政権党が次期衆院選まで税率を据え置くという無責任な対応で良いのか。

 菅首相は記者会見で、財政再建について「党派を超えた議論をする必要がある」と述べた。そう主張するなら、消費税率引き上げなど税制改革について、自民党との本格的な協議を目指すべきだ。

 岡田克也外相と北沢俊美防衛相は再任された。前首相の未熟な外交で傷ついた日米関係を立て直すには、米軍普天間飛行場問題を前進させることが欠かせない。

 地元・沖縄と地道に接触を重ね、基地負担軽減の早道は名護市辺野古に代替施設を建設する日米合意であることを、粘り強く説得しなければならない。

 前内閣では、与党・社民党の存在が外交・安全保障政策の足かせとなった。社民党の離脱を機に、新内閣は、日米同盟の強化や自衛隊の海外活動の拡充に取り組むべきだ。この分野では自民党との連携もあり得よう。

 財務相には野田佳彦副大臣が昇格し、直嶋正行経済産業相は再任された。日本の財政に対する市場の視線は厳しさを増し、国際競争力には陰りが見える。両経済閣僚には、危機を乗り切る明確な処方(せん)作りが期待される。

 疑問なのは、荒井聰国家戦略相が経済財政、消費者、食品安全担当を兼務することだ。民主党の目玉であるはずの国家指針の策定を軽視しているのではないか。

 行政刷新相への蓮舫参院議員の起用は参院選対策の色彩が濃い。事業仕分けの政治パフォーマンスの感覚では、独立行政法人や公益法人の改革は進むまい。

 ◆小沢氏には説明責任◆

 国民新党の亀井静香金融相は再任された。参院の与党議席は過半数ぎりぎりで、菅首相は、郵政改革法案の扱いなどで、国民新党の意向を無視できない状況にある。

 だが、前政権のように、少数政党に政府・民主党が振り回され続ける事態は避けるべきだろう。

 新政権が「政治とカネ」の問題にどうけじめをつけるかも注目される。菅首相と枝野幹事長は、小沢氏の幹事長辞任で「一定のけじめ」をつけたと語ったが、一般国民の認識とは乖離(かいり)がある。

 小沢氏は、少なくとも衆院政治倫理審査会に出席し、自らの疑惑について説明する責任がある。

2010年6月9日01時30分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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