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鳩山首相が辞任の会見に応じないまま、きのう正式に退任した。言葉も軽かったが辞め方も軽い。つまり首相の座がいかにも軽い。高らかに理想をうたった去年の所信表明を思えば、寂しい終わり方である▼今期限りの政界引退も表明している。資産家だから「晴遊雨読」で困るまい。だが、沖縄を混乱の中へ投げ込んだ普天間問題はこの先も続く。辞めても何一つ解決はしない。一議員、一個人としてどうかかわるのか。一言あってしかるべきだと思うのは小欄だけではあるまい▼そうした、もろもろの不信を積み残して菅内閣が誕生した。新内閣と民主党執行部は、「脱小沢」も功を奏して好評な船出をしたようだ。顔ぶれを見ると、「本の表紙」だけではなく目次まで変わった印象を受ける。あとは中身、ということになる▼かつてこの欄で、「主」と書いて「あるじ」とも「ぬし」とも読む、と書いた。小沢さんは民主党の「あるじ」というより、隠然とおどろおどろしい「ぬし」であると。最近はとりわけ民意から遊離した存在だった▼正月には議員が大挙「小沢邸詣(もう)で」に参じた。選挙をにらんだ露骨な利益誘導もあった。あれやこれやに幻滅した有権者は多かろう。皮肉と言うべきか、いまとなれば小沢氏は、支持回復の大いなる「含み資産」だったことになる▼「これを修行の場だと思って」「あらん限りの力を尽くして」。就任会見での新首相の弁に信を置きたい。「脱小沢」頼みではない政策への共感を、どう勝ち得ていくか。真価はすぐに問われることになる。