HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 07 Jun 2010 03:14:51 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:菅新首相が誕生 出直しの道筋を示せ:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

菅新首相が誕生 出直しの道筋を示せ

2010年6月5日

 菅直人氏が第九十四代首相に指名された。鳩山由紀夫首相の下で傷ついた民主党政権への信頼を回復し、「出直しの道筋」を有権者に示すことが急務だ。

 自民党所属歴がなく、二世議員でない首相就任は、一九九四年の村山富市氏以来、十六年ぶりだ。

 首相指名に先立つ民主党代表選では二百九十一票を獲得し、樽床伸二衆院環境委員長に百六十票以上の差をつけて当選した。

 参院選を控え、鳩山首相と小沢一郎氏の「政治とカネ」の問題や普天間飛行場の移設をめぐる迷走で失墜した政権への信頼回復を、菅氏に託したのだろう。

◆政権の前途は多難

 とはいえ、菅氏が首相指名後の記者会見で「大変、身の引き締まる思いで大きな責任を果たさなければならない重責を感じている」と語ったように、前途は多難だ。

 まずは鳩山首相の退陣理由となった「政治とカネ」の問題にどう取り組むのかが、政権への信頼回復のカギとなる。

 市民運動出身の菅氏にはクリーンなイメージがあるとされ、代表選の政見演説では「できるだけ個人の皆さんからの浄財で政治活動を続ける気持ちで全力を挙げてやってきた」と語った。

 民主党は昨年の衆院選で三年後の企業・団体献金全廃を公約しながら手つかずだった。菅氏は企業・団体献金禁止へ指導力を発揮すべきだ。

 鳩山、小沢両氏にもそれぞれの政治資金規正法違反事件について説明を促す必要がある。役職を退いても説明責任は免責されない。

 米軍普天間飛行場の移設問題については、会見で「日米合意を踏まえるのが私たちの責任。日米合意、閣議決定文書でも沖縄の負担軽減は重要視している」と述べるにとどめている。名護市辺野古への移設を強行するのか見直すのか、明確にすべきだ。

◆政策決定、再構築を

 経済政策も喫緊のテーマだ。

 本年度のように国債発行額が税収を上回るような予算を来年度も組むのか、社会保障の将来像や成長戦略をどう描くのか。

 菅氏は立候補会見で、財政再建、社会保障、経済成長を一体として進める考えを強調したが、その具体策は明らかではない。

 菅氏は財務相就任後、消費税率引き上げを容認する姿勢に転じており、首相就任後もその姿勢を堅持するのか、語る必要があろう。

 政策推進には「政策決定の一元化」の在り方を見直し、再構築することが不可避だ。

 菅氏は政見演説で、政権交代で廃止した、政策を議論する「党政策調査会」の復活を表明した。

 鳩山政権では政府と党が意思疎通を怠って混乱したケースがあった。高速道路新料金がその例だ。

 政策決定への不干渉を決め込みながら、政府が決めた政策を小沢氏の強い影響力でひっくり返すような政策決定の在り方は、一元化の姿には程遠い。

 政府と党が一体として政策決定できる体制を整えるべきだ。その際、無責任体制に陥らないよう留意する必要がある。

 そのためにも官邸機能の強化は避けられない。国家戦略局の創設を柱とする政治主導確立法案の早期成立を求めたい。

 小沢氏との距離をどう保つかも課題となる。

 菅氏は小沢氏について「(幹事長辞任後)しばらくは静かにしていただいた方が本人、民主党、日本政治にとっていい」と語った。要職には就けない決意だろう。

 内閣や党の要職に仙谷由人、枝野幸男両氏ら「反小沢派」を起用する意向からも、小沢氏と距離を置こうとする姿勢が見て取れる。

 ここ二十年ほど、政界に君臨してきた小沢氏に対する好悪が対立軸だったことは否めない。

 鳩山政権で再び顕在化した、「小沢支配」と揶揄(やゆ)される二重権力構造からの脱却は急務であり、新しい民主党の姿を示すためにも、「脱小沢」の姿勢を示す必要があることは理解する。

 ただ、小沢氏とその支持グループを排除すれば、すべてうまくいくという単純な話ではなかろう。菅氏には小沢氏の政治力をうまく使いこなす力量も問われている。

◆参院選で審判下す

 首相が代われば衆院を解散し、総選挙で政権選択を有権者に問い直すのが筋だが、それが無理なら七月予定の参院選を民主党政権への評価を下す機会としたい。

 菅氏は参院選までに、副総理としてかかわった政権交代後八カ月余りを総括し、新政権が目指す「国造り」の全貌(ぜんぼう)と、実現に向けた具体的な道筋を示す必要がある。

 選挙の審判を経なければ本格政権にはなり得ない。菅政権が暫定政権に終わるのか、本格政権となれるのか。それを決めるのは有権者自身だ。

 

この記事を印刷する