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天声人語

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2010年6月5日(土)付

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 地盤、看板、鞄(かばん)の3点セットと無縁だったからだろう、国会議員になるまでに菅直人さんは選挙で3回落ちた。厚相時代に中学の同級生が開いた「励ます会」で、氏が落選回数に触れると声が飛んだそうだ。「生徒会の副会長選挙でも落ちたぞ。付け加えろ」。爆笑がわいたという▼「負けるときは大変だけれど、勝つときはこんなにあっけないものか」は、衆院選に初当選した感慨である。今回も「あっけなかった」だろうか。鳩山首相の辞意からわずか2日で新首相に選ばれた。深手を負う民主党の浮沈が双肩にかかる▼短命だったここ4人の首相と、素性はだいぶ違う。勤め人の家庭に育ち、草の根の市民運動から政治に目覚めた。同志の鳩山氏とも違って自民党に所属したことはない。異色の総理と言っていい▼覚悟のほどは前の日からうかがわせていた。「小沢さんにはしばらく静かにしていただいた方が、ご本人にも、民主党にも、日本の政治にとってもいい」と発言した。最高実力者へのきっぱりした引導である▼小鳩の「二重権力」は国民の不信を招いてきた。その色を消すべく、幹事長と官房長官には小沢氏に批判的な人をあてると伝わる。古い上着を脱げるかどうかは大きな試金石になろう▼言葉を弾丸にたとえるなら、信用は火薬だと徳冨蘆花(ろか)は言った。火薬がなければ弾は通らない、つまり相手に届かないと。「国民が聞く耳を持たなくなった」と嘆いた鳩山首相には火薬は尽きていた。有言実行で言葉の重みを取りもどすことが、まずは船出の仕事となる。

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