きょう行われる民主党代表選に向けた党内各グループの動きが慌ただしい。夜な夜な集まって結束を誇示したり、票読みをしたり。派閥談合によるかつての自民党総裁選びと同じではないのか。
代表選には菅直人副総理兼財務相と樽床伸二衆院環境委員長が立候補を表明した。
小沢一郎幹事長と距離を置く各グループが菅氏の支持に回る一方、樽床氏は小沢氏を支持するグループに支援を要請した。
複数候補が政策や政治姿勢を論じ合う構図は望ましいが、各グループの動きには違和感を覚える。
国会近くのオフィスビルでは幹事長を支持する中堅議員が結束を固め、幹事長と距離を置く閣僚らは都内のホテルで情勢分析。道を隔てた別のホテルには副総理を支持するグループが集まって…。
これは決して、派閥全盛時代の自民党総裁選びではなく、今回の民主党代表選の光景だ。
かつての自民党総裁選びを「古い自民党がよみがえってきた」「派閥次元の話になっている」と批判していたのは、民主党自身だ。
有権者は昨年の衆院選で、民主党政権に旧態依然の政治との決別を託した。にもかかわらず、かつての自民党と同様、政党内の力学で後継首相を選ぼうとしているのは、どうしたことか。
これは今回の代表選が、鳩山由紀夫首相の退陣表明二日後に、慌ただしく設定されたことと無縁ではなかろう。
鳩山首相の辞任は「任期途中で代表が欠けた場合」に当たり、党員・サポーターも参加する本格的な代表選ではなく、国会議員だけによる投票になった。
参院選目前の国会終盤であり、政治空白を避けるためだとしているが、国会議員だけの「永田町の論理」で決めようとしているのではないか。
小沢氏やその支持グループが代表選を通じて、幹事長辞任後も強い影響力を残そうと画策しているのなら勘違いも甚だしい。
小沢氏による二重権力構造が続けば、「クリーンな民主党」への道は遠い。
代表選での議論は、七月十一日に予定される参院選の投票先を決める際の参考にしたい。
そのためにも候補者は、米軍普天間飛行場の県内移設方針を引き継ぐのか否か、「政治とカネ」の問題にどう取り組むのか、消費税率をどうするのかを、逃げることなく堂々と論じるべきである。
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