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天声人語

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2010年6月3日(木)付

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 去年9月の小欄で、中曽根元首相がかつて、新党さきがけの代表幹事だったころの鳩山首相に辛口の注文をつけた話を書いた。「政治は、美しいとか、キラリと光るとか、形容詞でやるのでなく、動詞でやるものだ」と▼鳩山さんは、「行動の前に哲学的な形容詞を大事にするべきではないか」と反論していた。たしかに、形容詞を欠く政治はやせ細った代物だろう。とはいえ動詞なき政治は絵に描いた餅にすぎない。中曽根さんの指摘は、この日を見通していたようでもある▼甘い感傷を詩歌にうたう人を「星菫(せいきん)派」などと呼ぶ。辞意を表明した民主党の両院議員総会での演説も、鳩山さんは持ち味を発揮していた。「ヒヨドリがそろそろ自宅に戻って来いよと……」などと言って総理大臣を辞める人も珍しい▼普天間への真摯(しんし)な「思い」も繰り返した。それが国民に分かってもらえなかったと嘆くが、多くの人は分かっている。「思い」を果たすために、米国とまともに交渉した痕跡さえないことに失望しているのだ。へなへなと萎(しお)れて沖縄を裏切った▼元首相の吉田茂に逸話がある。新聞記者にコップの水をかけた吉田が、さる貴い人から「気持ちはわかります」と言われたそうだ。「水をかけたいと思うだけなら、誰でも思います」と吉田は答えたという。「大事なのは、水をかけることでございます」▼小沢幹事長もポストを去る。「小鳩」に代わる新体制には、甘い言葉よりも簡潔でゆるぎない「動詞」がほしい。二人羽織を終演させれば、主語も一つになるはずである。

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