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6月2日付 編集手帳

 フランス語の知識がそれほど行きわたっていなかった明治の昔、その人は一部で「チョピン」と呼ばれたという。国文学者の池田弥三郎さんが『世俗の詩・民衆の歌』(講談社文芸文庫)に書いている◆(つづ)りの〈Chopin〉を英語式に読んだのだろう。ゲーテの「ギョエテ」のようなものらしい。甘美な(じょ)(じょう)と物悲しさと、『夜想曲』などで知られる“ピアノの詩人”に「チョピン」はどうも似合わないようである◆ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンの今年は生誕200年にあたる。記念の演奏会や催しに出かけた方も多かろう◆『ピアノ・ソナタ第2番・第3番』はこれまで20回ほど録音を試みたが、演奏に納得できず、すべて消去した――来日した現代最高のショパン弾きの一人、ポーランド出身のピアニスト、クリスチャン・ツィメルマン氏が本紙に語っていた。万人に愛され、音楽家には賛仰と畏怖(いふ)の対象でありつづける。大作曲家とはそういうものなのだろう◆〈六月や読めねど譜面美しき〉(堤一巳)。梅雨入りも近い。ショパンの『雨だれ』を聴きながら、夜想にひたる宵もいいだろう。

2010年6月2日01時13分  読売新聞)
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