HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 02 Jun 2010 03:15:45 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ガザ支援船攻撃 人道救済まで封じるか:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

ガザ支援船攻撃 人道救済まで封じるか

2010年6月2日

 封鎖中のパレスチナ自治区ガザへ救援物資を運んでいた国際人道家らの船団がイスラエル軍に急襲され九人(軍発表)が死亡した。人道的行動まで阻む攻撃への国際社会からの非難は当然である。

 船団は、トルコや欧州などの人権活動家らで構成する「自由ガザ運動」が組織。約七百人が六隻に分乗し、ガザで不足している建設資材、浄水装置や医療機器など約一万トンを積んでいた。これにイスラエル軍の特殊部隊がヘリコプターから降下して衝突が起き、兵士を含む多数が死傷した。人権団体公表の映像には、機関銃を持つイスラエル兵が写っていた。イスラエルは正当防衛を主張するが、相手が非武装なら説得力はない。

 ガザは、二〇〇七年にイスラム原理主義組織ハマスが武力制圧後、同じパレスチナ人自治区のヨルダン川西岸とで分断となった。以降イスラエルはハマスの武装強化阻止を理由に、境界の検問所を封鎖、物資搬入を極端に制限している。ガザ住民は南のエジプト側にトンネルを掘り、食料や燃料を“密輸”している。

 自由ガザ運動の救援は〇八年から八回続き、今回は最大規模だった。イスラエルは事前に航海中止を要求、従わなければ拿捕(だほ)すると警告したというが、多数の死傷者を出し、アラブ諸国から激しい非難を浴びている。

 中でもトルコはイスラエルにとって中東では一番親和的な国であり、両国海軍の合同訓練を近々予定していた。トルコのエルドアン首相は「これはテロだ」と厳しい言葉を投げ付け、トルコのイスラエル大使館前には抗議の市民約一万人が詰め掛けたほどだ。

 国連安保理は議長非難声明を採択、イスラエルに調査を求めた。イスラエルは協力すべきだ。

 中東和平交渉の停滞、後退も心配だ。オバマ米政権は、パレスチナ和平はテロ克服への困難な道のりの大切な一部と見ている。最近もイスラエルが入植凍結をしなかったことで交渉は中断。それをなだめ、アッバス自治政府議長とミッチェル米特使との会談が実現する矢先の事件となった。

 イスラエルのネタニヤフ政権は連立内部に強硬な右派を抱えている。だからといって内政に配慮しすぎれば「イスラエルは和平など望んでいない」(アラブ連盟・ムーサ事務局長)とみられても仕方ない。

 国際世論に耳を傾けねばますます孤立するしかなくなる。

 

この記事を印刷する