子ども手当の支給が今月から始まった。財政との兼ね合いから、来年度からの満額支給を見直す動きがある。子供は社会が育てるという理念を、少子化に直面する世の中に広げたい。
本年度の手当は、中学生までの子供一人当たり月一万三千円が支給される。
民主党政権は、来年度からは満額二万六千円の支給を公約としてきた。ところが財政事情から、減額案が出る一方で、小沢一郎幹事長が大幅修正には慎重姿勢を示すなどなかなか決着しない。
これまで子育ては家庭に任され、支援策もそれを補助的に支えるだけで、少子化は止まらなかった。社会で子育てを支えようと政策転換したのが民主党政権。同手当はその看板政策になる。
「社会で支える」という理念は国民が共有すべきだ。所得制限論もあるが、同種手当は保護者の所得に関係なく、すべての子供へ支給するのが世界的な流れだ。
先月公表された「二〇一〇年版子ども・子育て白書(少子化社会白書)」によると、子育て中の女性が求める少子化対策(複数回答)は、「経済的支援」(72・3%)がトップ、二位の「保育所などの充実」(38・1%)の倍近くで、経済支援は重要だ。
だが同時に、待機児童解消のための保育所整備や子供の貧困対策、子育てできる労働環境など働き方の見直し、雇用・収入が不安定な非正規が多く結婚しにくい若者の就労支援など、求められている政策や解決すべき課題は多い。
少子化対策など家族関係社会支出の対国内総生産(GDP)比は、欧州の3%前後に比べ日本は1%未満だ。少子化対策全体への積極的な財政投入が要る。
しかし現実の財政事情は厳しい。国債発行で借金を重ねれば、当の子供たちにツケが回る。現状のままなら年五・四兆円の財源が必要な満額支給は不可能だろう。ただ、国民には安心できる社会サービスが得られるなら、税負担を受け入れるという理解は広がっている。消費税を含む税制全体の見直しを図るべきだろう。
子供が国外で暮らす在日外国人にも支給を可能にする制度の矛盾は見直される方向だが、自治体や企業が財源の一部を負担する児童手当制度は残したままで、一一年度以降の制度の検討も進んでいない。子育てに役立てるために、常なる検証と見直しを行い充実した制度にするべきだ。
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