HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 01 Jun 2010 21:15:31 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:つえをついたお年寄りを前にしながら、シルバーシートに座り込…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年6月1日

 つえをついたお年寄りを前にしながら、シルバーシートに座り込んだ若者が動こうともしない。悲しいことに、都会ではありふれた光景になってしまった▼「お年寄りに席ぐらい譲ったらどうだい」。まだ体力に自信があったころ、二十歳ぐらいの男の子にそう注意したことがある。彼ははっとした顔を見せて「すみません」と謝りながら席を立った▼心根は優しい若者がほとんどなのだと思う。ちょっとばかりの想像力が足りないだけなのだ。ただ、相手によっては、思わぬ車内トラブルに発展することもあるから、要注意だ▼朝から、若い女性に絡んでいる酔っぱらいの男に注意した時のことだ。「おれは刑務所に入ってもいいんだ」とすごまれた。近くにいた青年が加勢してくれてその場は収まったが、女性はお礼の一言もなく知らんぷりだった。勇気を出した甲斐(かい)もなかったなと情けなかった▼そんな昔の話を思い出したのは、つえをついたおばあさんに席を譲ろうとしたら、冷たく断られたという女子高校生の体験を発言欄で読んだからだ。「小さな親切が、できなくなってしまいそうです」という声が悲しい▼自分は若いつもりなのに席を譲られ、内心穏やかでないかもしれない。それでも、若い人が振り絞る勇気にどうか応えてほしい。小さな親切がめぐりめぐって、私たちの住む社会を豊かにするのだから。

 

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