日本と中国は首脳会談で東シナ海ガス田の共同開発に向け条約交渉を始めることで合意した。両国には反対の声が強く、合意達成には環境・省エネなどの協力で条件を整えることが欠かせない。
温家宝首相は鳩山由紀夫首相の就任後、初めて来日した。韓国哨戒艦の沈没事件では南北朝鮮に中立を保つ慎重姿勢に終始した。
東シナ海ガス田問題では紛争を避けるため首脳間に「ホットライン」を設けることで合意した。
温首相の来日を前に、日中が主張する排他的経済水域(EEZ)が重なる東シナ海は波立った。
四月に中国の海軍艦隊が主張するEEZの外周に沿って航海した。五月には日本がEEZの境界としている中間線の日本側で、海底調査をしていた海上保安庁測量船が中国の巡視船に妨害され、調査の中断に追い込まれた。
日中両国は二年前の六月、中間線北部のガス田を共同開発し、南部の中国側で中国が開発中のガス田「春暁(日本名・白樺)」に日本が出資することで合意した。
しかし、主権問題を棚上げした合意に両国で反発が起きた。とくに中国では日本が中国側と認める春暁ガス田も共同開発と宣伝したことに激しい批判が渦巻いた。
この二年、春暁への日本出資をめぐる協議は一向に進まず今後の交渉の行方も楽観はできない。
中国が海洋権益の主張を強めているのは高度成長で資源需要が爆発的に高まったことがある。生産一単位当たりに必要なエネルギーが日本の数倍という粗放的な発展は環境汚染も深刻にしている。
また、国力の充実につれ強引さを増す資源外交や権益確保の活動は諸外国の警戒を招いている。
問題の解決には中国の発展を省資源、環境調和型に転換していくことが役に立つ。胡錦濤国家主席は二〇〇八年五月の来日で「世界でも一流の日本の省エネ・環境技術に学びたい」と求めた。
しかし、その後、日本では政権が次々に交代した。〇七年に対中円借款の新規供与が終結して以降、新たな日中の環境・省エネ協力の枠組みもできていない。
対等のベースで新たな協力の枠組みができれば、中国の資源・環境問題の緩和に役立つ。資源獲得の衝動を和らげ国民感情の抵抗が強い日本との資源共同開発も受け入れやすくなるのではないか。
政治主導を掲げる民主党政権は、こうした日中関係の大きなデザインこそ描き出してほしい。
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