米軍普天間飛行場の移設先を辺野古とする日米共同声明が発表され、反対した福島瑞穂消費者担当相が罷免された。責められるべきは公約を実現できなかった鳩山首相自身であり、罷免は筋違いだ。
日米外務・防衛担当閣僚の共同声明は、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を現行案通り、米軍キャンプ・シュワブのある名護市辺野古崎地区と隣接水域と明記した。いわゆる県内移設だ。
「最低でも県外」と公約した鳩山由紀夫首相は「現行案ではない」と強弁するが、在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民に負担を強いることに変わりはなく、そんな詭弁(きべん)は許されるものでない。
首相は自らが決着期限に設定した五月末までに米国、移設先、連立与党の合意を得ると言っていたものの、共同声明発表までに合意を得たのは米国だけだった。
移設先や連立与党を差し置いて共同声明を発表したのは、首相の体面を保つ意味しかない。
そんな共同声明に社民党が反対するのは当然だ。鳩山首相がすべきは、福島氏の罷免ではなく、国外・県外移設への努力を続けることではなかったか。
移設先とされた名護市の稲嶺進市長は「今さら辺野古だと言っても実現可能性はゼロだ」、沖縄県の仲井真弘多知事は「実行するのは極めて厳しい」と語った。
自民党政権時代に辺野古への移設が進まなかったのは地元の反対が強かったからにほかならない。
鳩山首相は今後、地元の反対を押し切ってでも移設を推し進める愚を犯すつもりなのだろうか。それでは自民党政権以下だ。
首相は二十七日の全国知事会議で沖縄での米軍訓練の一部を受け入れるよう協力を呼び掛けた。
在日米軍の基地負担を、沖縄だけに押しつけず、受益者である日本国民全体で可能な限り分かち合うという方向性は正しい。
しかし、具体案がないまま負担を求めても対応のしようがなく、沖縄の負担軽減に努力する姿を見せるパフォーマンスにすぎない。
政権発足後八カ月の迷走劇を、沖縄に過重な基地負担を強いる安保体制の現実に目を向けさせたと前向きに受け止める意見があることは理解するが、それ以上に、首相発言に対する信頼が失われたことの意味は大きい。
鳩山氏が首相として適任かどうか、参院選は本来、政権選択選挙ではないが、この際、国民の意思を参院選で示すほかあるまい。
この記事を印刷する