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社民連立離脱―多様な協力の形を探る

 当然の選択である。

 社民党が、民主、国民新両党との連立政権からの離脱を決めた。米海兵隊普天間飛行場の移設問題で、党首の福島瑞穂・消費者担当相が閣議決定への署名を拒み、罷免されたためだ。

 社民党と同様、鳩山由紀夫首相も「最低でも県外」への移設をめざすと明言していた。「言葉に責任を持つ政治をやりたい」との福島氏の言葉を、首相はかみしめるべきである。

 安全保障、基地問題や憲法問題は、社民党の理念政策の核心をなすテーマだ。社会党当時の村山富市委員長が、首相になったとたん、自衛隊合憲、日米安保堅持へと路線転換したことが、今日へと続く党勢退潮に拍車をかけた。そのトラウマは深い。

 3党連立合意は大きく10項目、細かくは34項目あり、安保はその一つに過ぎない。しかし、それが「譲れない一線」であるなら決断もやむをえない。

 閣内を去るとはいえ、安保以外の政策合意では今後も鳩山政権と協議し、その実行に努めていくことも決めた。参院選に向けた選挙協力も、ご破算にはしない。「古い政治に戻したくないという多数の国民の意思」を踏まえたという。賢明な選択と評価したい。

 連立か、対決か。そんな二者択一の発想に政党間協力のあり方が縛られる必要はない。多様な連携の形がありうることは過去の経験からも明らかだ。

 1997年の社民党の運動方針は、時の橋本龍太郎自民党政権に対して「閣外協力の与党」というスタンスを掲げた。閣僚を送り込む「政権連合」ではなく、政策面で協力する道を探る「政策連合」という考え方である。

 自公連立は政策合意による政権連合ではあったが、組織票を融通しあう「選挙連合」の側面が際だった。

 様々な政党間協力の形の中で、政策ごとに話し合い、接点を求め、必要なら法案を修正していくという作法に、日本の政党政治はいまだ習熟していない。社民党の選択は、新たなルール形成の契機となるだろうか。

 発想の転換を求められているのは、むしろ民主党の側である。

 郵政改革法案をはじめ、民主党の国会運営はいかにも乱暴だ。数にものを言わせて採決を強行するばかりでは、政党間の政策協議どころではない。

 社民離脱で参院での与党議席は過半数ぎりぎりになった。逆風が予想される夏の参院選で過半数を割り込めば、なりふり構わぬ多数派工作がまたぞろ展開されるのかも知れない。

 衆参両院の議席の「ねじれ」が、「大連立」騒ぎに象徴される無原則な政権づくりへの先祖返りをもたらすなら、民主主義の前進はない。

 透明で正当な政党間協力のルールをつくる。それができれば、政権の姿も、国会の姿も変わるはずである。

日中韓―「北」に高をくくらせるな

 韓国が「断固たる措置をとる」と言えば、北朝鮮は「全面戦争で応える」とやり返す。韓国艦の撃沈を受け、おどろおどろしい言葉が飛び交う。

 北朝鮮を自制させ、新たな軍事衝突に発展させないためには、どのような協調態勢を築くべきか。関係国に問われているのは、そのことだ。

 日本と中国、韓国の定例首脳会議が韓国で開かれた。記者会見で、李明博大統領はこの問題について「引き続き協議し、適切に対処することで一致した」と語った。

 日中韓が具体策を打ち出せたわけではないが、中国がわずかだが変化を見せたことは注目される。温家宝首相が李大統領との会談で、「中国政府は(南北朝鮮の)だれもかばうことはしない」と言明し、「あらゆる破壊行為に反対し非難する」と述べた。

 中立の立場を強調し、関係各国に冷静さを求める姿勢に変わりはない。だが慎重な言い回しながら、無条件で北朝鮮を擁護するわけではないということも国際社会に示そうとしたようだ。であれば、その批判を北朝鮮に直接突きつけ、圧力をかけてもらいたい。

 この間、北朝鮮の反応は激しくなるばかりだ。韓国政府とのすべての関係を断ち切ると宣言し、不可侵の合意も全面破棄するとした。

 こうした状況の打開に果たす中国の役割の大きさは、改めて指摘するまでもない。食糧や燃料の供給国として北朝鮮の生命線を握っているのだから。

 韓国政府は早ければ今週にも、撃沈問題を国連安全保障理事会に提起したい考えだ。日本と米国は全面的な支持を表明している。

 常任理事国の中で、中国とロシアは今のところ北朝鮮批判に慎重だ。しかし、北朝鮮はそれを見越して国際社会はあまり動けまいと高をくくっているふしもある。北朝鮮を刺激したくないという思惑ばかり先行してしまっては、かえって朝鮮半島の平和と安定には役立たない。中ロともそれはわかっているはずだ。根本的解決には国際的連携を優先させるべきだ。

 日本は事件を受け、北朝鮮への送金の規制をより厳しくするなど、独自の制裁をさらに強めた。北朝鮮に出入りする船舶を調査できるようにする貨物検査特別措置法も先週、成立した。

 鳩山由紀夫首相は東京に温首相を迎えてきょう会談する。そこでも北朝鮮問題が主要な議題の一つになる。

 安保理で韓国艦問題が論議される場合に備え、非常任理事国の日本は国際社会の一致した姿勢を示すべく、中国に協調を強く促すべきだ。

 3カ国首脳会議の冒頭、鳩山首相は犠牲者への黙祷(もくとう)を唐突に提案し、中韓の首脳を面食らわせたようだ。より重要なのは、パフォーマンスより、関係国の連携を深める外交力である。

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