HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 53209 Content-Type: text/html ETag: "bdf09-1d33-cd9290c0" Expires: Fri, 28 May 2010 21:21:38 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 28 May 2010 21:21:38 GMT Connection: close 普天間日米合意 混乱の責任は鳩山首相にある : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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普天間日米合意 混乱の責任は鳩山首相にある(5月29日付・読売社説)

 日本政治と日米関係を混乱させた末、「国民との約束」を簡単に破る。一応謝罪はするが、責任はとらない。これが鳩山首相の本質だろう。

 日米両政府は、米軍普天間飛行場の移設先を沖縄県名護市辺野古周辺と明示した共同声明を発表した。日米合意に反対し、閣議での政府対処方針への署名を拒否した社民党党首の福島消費者相を、鳩山首相は罷免した。

 連立与党の一角を担う党首とはいえ、政府方針に同意しない以上、罷免は当然である。

 ◆福島氏罷免は当然だ◆

 鳩山政権が、展望のない県外移設を断念し、辺野古沿岸部に代替施設を建設する現行計画にほぼ回帰したのは、現実的判断だ。

 だが、方針転換がいかにも遅すぎた。昨年までは現行計画を容認していた地元が反対に転じており、実現のハードルは高い。辺野古移設は迷走の末、元に戻ったというより、政権発足前より悪い状況に陥ったにすぎない。

 政府は、日米合意の実現に向けて、沖縄県や名護市の説得に全力を挙げるべきである。

 共同声明は、沖縄の負担軽減策として、米軍訓練の分散移転や、自衛隊と米軍による米軍施設の共同使用など8項目を掲げた。

 ただ、その多くは、代替施設建設の進展に応じて「検討」するとされているだけだ。負担軽減がどの程度実現するかは不透明だ。

 政府は当初、県内移設に反対する社民党に配慮し、日米の共同声明にある移設先の「辺野古」を、対処方針には明示しない方向で調整していた。だが、福島党首の罷免に伴い、対処方針にも「辺野古」を明記した。

 「二重基準」をとらなかったのは当然のことだ。民主党には、社民党が政権を離脱し、参院選での選挙協力ができなくなる事態を避けたい思惑がある。だが、選挙目当てで、安全保障にかかわる問題をあいまいにすべきではない。

 社民党は、「日米安保条約は平和友好条約に転換させる」「自衛隊は違憲状態」との見解を維持している。そもそも、民主党が、基本政策の異なる政党と連立を組んだこと自体に無理があった。

 鳩山首相自身が、「常時駐留なき安保」を持論とし、“米国離れ”志向を見せていたことも、混乱を招く一因となった。

 ◆社民との連立解消を◆

 社民党は、県内移設に反対するばかりで、実現可能な対案を出さなかった。普天間問題の迷走への責任は免れない。

 社民党との連立が続く限り、外交・安保政策をめぐり、対立が繰り返されるだろう。首相は、この際、社民党との連立解消をためらうべきではあるまい。

 首相は、問題決着に「5月末」の期限を自ら設けた。それまでに沖縄県、移設先の自治体、米国、連立与党の同意を得ると「大風呂敷」を広げたうえ、最近まで「職を賭す」などと言い続けた。

 ところが、実際は、米国との合意を得ただけで、沖縄も移設先も社民党も反対している現状は、これらの発言を裏切るものだ。

 政府の最高責任者が「国民との約束」を反故(ほご)にすれば、政治への信頼は地に落ちる。

 鳩山首相は28日夜の記者会見で「誠に申し訳ない思いでいっぱいだ」と謝り、「今後も粘り強く基地問題に取り組むことが自分の使命だ」と強調したが、単なる謝罪で済まされるものではない。

 これは、鳩山政権が、普天間問題に詳しい官僚を外し、知識と経験、洞察力の乏しい首相と担当閣僚がバラバラで場当たり的に取り組んだ結果である。

 名ばかりの「政治主導」で、重大な失政を犯しながら、首相も担当閣僚も責任をとらず、民主党内から強い批判も出ないのは、あまりにお粗末だ。

 鳩山首相は、その資質に深刻な疑問符が付いている。首相発言は日替わりのように変わり、指導力も決断力も発揮できなかった。

 政治で問われるのは結果責任だ。努力したが、できなかったでは、誰も評価しない。

 首相に求められるのは、自己流の「思い」を語ったり、会談相手に迎合したりすることではない。着地点を見極めつつ、閣僚と官僚を使いこなし、最後は自ら決断して問題を解決する実行力だ。

 ◆同盟強化が緊急の課題◆

 鳩山首相の力量不足により、日本政府と米国や沖縄県、関連自治体との信頼関係は、大きく損なわれてしまった。

 北朝鮮の魚雷攻撃による韓国軍哨戒艦沈没事件で、朝鮮半島情勢は緊迫している。中国軍の増強や示威的活動の多発など、不透明な東アジア情勢を踏まえれば、日米同盟の強化は緊急の課題だ。

 政府は、その視点を忘れず、道半ばの普天間問題の解決に真剣に取り組まなければならない。

2010年5月29日01時14分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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