HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 28 May 2010 22:15:28 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:米倉経団連 働く人に安心と希望を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

米倉経団連 働く人に安心と希望を

2010年5月28日

 日本経団連の新会長に米倉弘昌住友化学会長が就任した。企業の海外進出で細る国内雇用をどう回復させるのか。経営者集団のトップとして、働く人が希望を持てる理念と新産業の姿を示すべきだ。

 「自利利他公私一如」。企業は自社の利益にとどまらず、地域社会や国に貢献するものでなくてはならない−を意味する住友化学の経営理念だという。

 米倉氏自らも「国民に分かる言葉で政府に経済政策をぶつける」と語っており、労働者派遣法など企業に有利な政策提言を繰り返してきた経団連の路線修正も期待させる。企業利益優先からの脱皮に努めてほしい。

 まず取り組むべきは、いかに生産拠点を国内に残し、雇用機会を増やしていくかではないか。

 日本企業は低賃金の新興国とのコスト競争に巻き込まれて人件費削減に走り、失業率も5%前後の高い水準が続く。少子高齢化で国内需要が縮み、企業の多くは購買力をつけた中間所得層が台頭するアジアを目指している。日本企業の海外生産比率は高まり、トヨタ自動車はゆうに五割を超えた。

 企業で働く人は全労働人口の七割、国民所得に占める賃金も六割を超える。企業と国民生活とのパイプは太いが、国境を越えて市場を奪い合う時代に海外進出を抑えることは難しい。自動車産業は大規模に海外へ出ており、国内雇用回復への期待は容易でない。

 米倉経団連はそれを前提に、国内産業の空洞化や雇用喪失と向き合わざるを得ない。時代が求める環境・エネルギー分野や介護・医療など、雇用を吸収する新産業への大胆な転換が不可欠だ。

 二〇〇九年度、日本企業が海外子会社から受け取った配当金は、税制改正による原則非課税が呼び水となり初めて三兆円を超えた。

 経団連加盟企業からも「海外で稼いだ利益で日本を元気づける必要がある」と、還流資金を設備投資などに振り向け雇用創出を促すよう求める声が相次いでいる。

 安心して働ける場を築き、日本経済を再び成長軌道に乗せていく。それが米倉経団連の挑むべき課題だろう。

 気がかりな点もある。「政治に依存しない独自の成長戦略を描きたい」という米倉氏の思いだ。

 企業よりも消費者など需要サイドを重視する鳩山政権との距離感がそう言わせたようだが、税制などの決定権は政治の側が握る。鳩山政権との関係を創造的に運ぶすべも忘れるべきでない。

 

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