事前の期待が小さければ、本番で受けるプレッシャーも小さいはず。そういう前提で「サッカーの岡田ジャパンは、期待されていないがゆえに期待できる」と先日、小欄に書いた▼この論法でいくと、ワールドカップ(W杯)南ア大会を前に臨んだ国内最後の試合結果も、“好材料”ということになる。ライバルの韓国相手にまったくいいところなく、0−2での完敗。妙な表現になるけれど、順調に、ファンの期待をさらにしぼませた▼気になるのは、韓国戦後、代表を包んでいた重苦しいムードだ。中でも岡田監督は目もうつろでショックがありあり。あまつさえ「進退」まで口にしたという。まさかニコニコもできまいが、ここで沈鬱(ちんうつ)になっていては、元も子もない▼以前、Jリーグ名古屋グランパスのストイコビッチ監督に「選手に絶対、言わないことにしている言葉はあるか」と聞いたことがある。少し考えてから監督は答えた。「それは『We(ウィー) must(マスト) win(ウィン)(勝たなければならない)』だ」▼選手に精神的重圧がかかることの怖さを知ればこそ。岡田ジャパンは期待を裏切り続けることで、そのプレッシャーを減ずるための「種」をしっかり蒔(ま)いてきたのだから何も落ち込むことはない▼本番で、いい「実」を成らせればよい。やっかいな<must>から解放された自由で、伸びやかなプレーによって。