HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 50330 Content-Type: text/html ETag: "f86c1-139a-9797f500" Expires: Mon, 24 May 2010 21:21:45 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 24 May 2010 21:21:45 GMT Connection: close 5月25日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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5月25日付 編集手帳

 調理法が徹底されたいまは高級な冬の味覚としておなじみの河豚(ふぐ)も、明治の昔はまだ怖い食材であったらしい。(うそ)をその味にたとえたのは夏目漱石である◆『虞美人草(ぐびじんそう)』に書いている。〈嘘は河豚汁である。その場限りで(たたり)がなければこれほど(うま)いものはない。しかし中毒(あたつ)たが最後苦しい血も吐かねばならぬ〉◆「最低でも県外」は反古(ほご)になり、「自然への冒涜(ぼうとく)」として()り捨てた埋め立て工法は息を吹き返し、「地元、米国、連立与党すべてが納得する形での5月末までの決着」は影も形もない。普天間移設をめぐって鳩山首相が語った言葉の数々である◆その祟りに血を吐いたのは首相自身ではなく、政策の調理法も満足に知らぬシェフから嘘のご馳走(ちそう)を振る舞われた沖縄の人々だろう。米軍の抑止力を保てる移設先として「辺野古」に行き着くにしても、その場しのぎの嘘がなければ、もっと残酷でない道筋がたどれたはずである◆相手の心情に寄り添いたくて、たとえ一瞬でも憂いを癒やしたくて、喜ばせたくて、つい嘘をついてしまう。心の優しい人と評されたことだろう。何の間違いか、首相でなければ。

2010年5月25日01時32分  読売新聞)
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