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天声人語

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2010年5月25日(火)付

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 「悪魔のささやき」などと言うが、「道具」が悪事を誘うこともある。シェークスピアの人間観察はさすがに鋭い。史劇の「ジョン王」で、「人間は、悪事をおこなうための道具を目にすると、つい悪事をおこないたくなるものだ」と王に言わせている(小田島雄志訳)▼この「悪事を行う道具」とは、忠誠心あつい家来のことだ。そんな家臣がいるばかりに、王は甥(おい)の死を望む気持ちを募らせ、ほのめかす。家来は王の心の内を忖度(そんたく)して甥に凶刃を向ける。先の言葉は王の後悔である▼北朝鮮による韓国の哨戒艦沈没の場合、「道具」とは潜水艦艇や魚雷であろう。「ジョン王」のように、独裁者の心中を忖度する者が指図したのかもしれない。お決まりの忠誠心競争である。異様な国の異様な行動で朝鮮半島は緊張が高まっている▼韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領はきのう、南北関係をほぼ途絶させる厳しい姿勢を表明した。軍事挑発には自衛権を発動させるといい、国民に「覚悟」を求める内容という。勃発(ぼっぱつ)から60年の朝鮮戦争が、今も休戦中にすぎない現実をあらためて思う▼許されぬ暴挙を、金正日(キム・ジョンイル)総書記が悔いたか、喜んだかは知らない。いずれにせよ、この国の小児性を思えば、核やミサイルがいかに危険な「道具」かは明らかだ。しかも自国民を飢えさせながらの兵器開発である▼「ジョン王」は中世英国に実在した人物で、史上最も悪評の高い王の一人とされている。かわって現代に悪評とどろく「金王朝」である。各国の協調と包囲網にゆめゆめ揺るぎがあってはなるまい。

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