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だれも新たな軍事衝突に発展することは望まない。しかし、異様な独裁体制に武力挑発をやめさせるためには強い圧力が必要だ。
北朝鮮の魚雷による韓国哨戒艦の撃沈を受け、韓国をはじめ各国が直面しているのは、そうした難しい課題だ。緊密な国際的連携で解決への道筋を見つけ出さなければならない。朝鮮半島の安定に大きなかかわりを持つ日本にとって、これは自身の問題でもある。外交や可能な法的手段を動員して事態の打開に努めたい。
「北朝鮮の軍事挑発であり、北は相応の対価を払うようになる」
韓国の李明博大統領はきのう発表した談話で北朝鮮を強く非難した。
来月は、朝鮮戦争の勃発(ぼっぱつ)からちょうど60年。「この60年、北は少しも変わらなかった。同じ民族として実に恥ずかしい」。大統領の言葉には強い憤りといらだちがにじんだ。
韓国は「対価」として、北朝鮮との交易や交流を原則的に止めることを決めた。武力侵犯には「即刻、自衛権を発動する」とも強調した。
また、米軍と合同で対潜水艦演習を実施し、米国主体の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)による海上封鎖訓練も行う意向を明らかにした。
北朝鮮は激しく反発する姿勢を見せている。魚雷攻撃を否定し、「戦争局面に入った」と脅す。韓国が北朝鮮との境界付近に設けている対北宣伝用のスピーカーを撤去しなければ射撃すると警告、「核抑止力を拡大・強化する権利がある」と主張した。
応酬を衝突にエスカレートさせてはならない。緊張を過度に高めることなく、北朝鮮に自制を迫るために国際社会は何ができるか。韓国は国連安全保障理事会に問題を提起する方針だ。安保理のなかでも米中両国の役割は重い。日本も非常任理事国だ。
折しも北京で米中の戦略・経済対話が始まった。クリントン国務長官は「北朝鮮問題で米中は共同で対処しなければならない」と語った。米議会内ではすでに北朝鮮をテロ支援国家に再び指定すべきだとの声も出ている。
経済的に北朝鮮を支える中国が平壌に圧力を加え、暴走を阻むことは、中国に国際社会が求めている役割だ。
鳩山内閣はきのうの安全保障会議で、韓国を支持して日米韓の連携を強めることを確認した。
中国への働きかけも鍵だ。月末の日中韓首脳会議は大切な舞台になるが、事態は切迫している。米、中、韓、ロシアという関係国の外相会談を緊急に呼びかけてはどうか。
核開発に対する安保理制裁を受けて、北朝鮮船などの検査を可能にする貨物検査特別措置法案が衆院を通った。北朝鮮への国際的な包囲網を強めるためにも、成立は不可欠だ。
幼い男児や女児が性的に虐待され、抵抗のすべもなく屈辱を受けている。そんな写真や動画が、インターネットでは簡単に手に入る。
警察庁によると、画像を載せた者や撮影者を突き止め、摘発した例は昨年500件を超す。違法画像が見つかれば、サイト管理者への削除要請も行われる。だが海外サーバー経由のものなどは、たどり着くのは難しい。
違法な児童ポルノ画像の流通をせき止める、有効な手だてが必要だ。
プロバイダーなど通信事業者が自主的に取り組もうとしているのが、ブロッキングという手法だ。違法サイトのリストを基に、ユーザーがそのサイトを閲覧しようとすれば、自動的に遮断する。欧州などでも導入が広がる。
問題は、憲法で侵してはならないとされている「通信の秘密」とのかねあいだ。特定サイトへのアクセスを検知する目的で、ユーザーの同意なく通信を機械的に監視することは、私的検閲にあたり、本来は許されまい。
仮に政府がブロッキングにかかわり都合の悪い情報を遮断しようとするなら、なおさら危険なことだ。
しかし被害児童にとっては、性欲の対象にされた画像をだれもが見られる状態にあること自体が、拷問に等しい権利侵害となる。心に受けた傷は大人になっても残るだろう。
検挙や削除要請では深刻な被害を避けられない場合に限り、刑法で定める「緊急避難」にあたるという考え方で、ブロッキングを認めるべきだ。
とはいえ、副作用も心配な手法だ。ブロック対象の選定は第三者機関が透明な手続きで行い、捜査当局がむやみに介入できないようにする。児童ポルノ以外には拡大させてはなるまい。ネットユーザーも納得できるような仕組みづくりを、政府の協力も得ながら考えてほしい。
児童ポルノ画像は、子どもの性的搾取とも言うべきものだ。ネット上を漂う様々な有害情報の中でも、特別に許されないという認識を共有してゆきたい。国際協力による摘発強化を含め、幾重もの対策が必要だ。
例えば、ファイル交換ソフトでの流通はブロッキングでは止められない。児童ポルノ制作やネット投稿だけでなく、ファイル交換やダウンロードで違法画像を入手したり、持ち続けたりすることも、法で禁じるべきである。
昨年の通常国会では、自公与党が提案した「単純所持罪」を新設する児童買春・児童ポルノ禁止法改正案と、民主党の対案とを審議。捜査権乱用に歯止めをかけ、単純所持禁止の方向で、修正協議がまとまりかけていた。
ところが、その後の衆院解散と政権交代で議論は宙に浮いたままだ。対策が遅れるほど、深刻な被害が広がってゆく。政治の怠慢である。