HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 50509 Content-Type: text/html ETag: "b2097-1640-2a51e500" Expires: Sun, 23 May 2010 03:21:38 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 23 May 2010 03:21:38 GMT Connection: close 裁判員制度 1年間の検証を改善に生かせ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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裁判員制度 1年間の検証を改善に生かせ(5月23日付・読売社説)

 裁判員法が施行されてから1年が経過した。裁判員裁判は、(おおむ)ね順調に実施されている。

 だが、一方で課題も見えてきた。これまでの公判の綿密な検証を行い、問題点を改善していくことが大切だ。

 最高検によると、裁判員法が施行された昨年5月21日からの1年間に、対象事件で530人に判決が言い渡された。一つの事件で6人の裁判員が選ばれることから、これまでに全国で3000人以上が裁判員を務めたことになる。

 多くの公判は3〜4日間で終了している。だが、京都地裁で20日に判決が出た事件の公判は、これまでで最長とみられる9日間を要した。傷害致死罪などに問われた被告の精神鑑定医らの証人尋問に多くの時間が割かれたためだ。

 今後は死刑の適用などを巡り、より長期化する公判もあろう。

 裁判員に過度の負担がかからないよう配慮しながら、十分に審理を尽くすためには、裁判官はもちろん、検察官、弁護人が効率的な公判の進行に留意することが肝要である。

 大きな課題として浮かび上がったのが、裁判員裁判の約2割を占める性犯罪の公判のあり方だ。

 帰宅途中の女性に乱暴し、負傷させた男について、大分県警が、裁判員裁判の対象である強姦(ごうかん)致傷容疑ではなく、対象外の強姦容疑で送検したケースがあった。

 女性が、「事件を知られたくない。裁判員裁判だけは嫌」と訴えたからだという。

 検察は結局、強姦致傷罪で起訴し、被告は裁判員裁判で裁かれることになった。

 女性が負傷した以上、検察の対応は、公正な処罰の観点から適切だったといえるが、公判では、被害者のプライバシーの保護に、十分に配慮しなければならない。

 現在、法廷では、被害者の氏名を明らかにせず、被害者が証言する際には、別室からモニターを通じて語るビデオリンク方式などを用いている。こうした措置だけで十分なのかどうか、検討を重ねていく必要があるだろう。

 懸念されるのは、裁判員裁判を敬遠するために被害届を出さずに泣き寝入りする被害者が増えるのではないかということである。

 このほか、起訴から公判まで時間がかかり過ぎるといった問題点も指摘されている。

 裁判員法は、必要があれば2012年以降に制度を見直すよう定めている。法曹界は、裁判員経験者の意見を参考に、制度の改善に努めてほしい。

2010年5月23日01時18分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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