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天声人語

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2010年5月23日(日)付

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 そういう年頃の子が身近にいないせいか、積み木というものに久しく触れていない。百貨店のおもちゃ売り場をのぞいて、結構な値段に驚いた。長く買ってもいないから、こちらの感覚が何十年か前のままらしい▼思いを形にする木片は、時に意地悪だ。積み方が甘いと崩れ、ボタン一つでリセットとはいかない。子どもたちは両手で挫折や辛抱を知り、ひらめきに出会う。これを大勢でやるとどうなるか▼「積木(つみき)劇場」なる舞台を東京都八王子市で見た。約50人の幼児が、ヒノキの間伐材で作った積み木3万個を好きに積んでいく。立方体など3種だけで、何かの形にするには工夫が要る。高さを欲張って崩したり、人のをうっかり壊したり。気配りや役割分担が自然に生まれるのが面白い▼1時間後、赤じゅうたんの上に小さな街ができた。背丈ほどの塔もある。街を大道具に見立てて、女性4人組のXUXU(しゅしゅ)がアカペラで何曲か歌った。声の積み木である。最後に子どもたちが舞台に戻り、街を抱きしめながら崩した▼進行役の荻野雅之さん(62)は山梨県で家具工房を営む傍ら、積み木の体験イベントを各地で開いている。「集団の中で思わぬ化学反応が起こり、おのずと生きる力が身につく。歌との組み合わせは初めてだが、作品が誰かの役に立つ喜びを知ってくれたと思う」▼ゲームのように得点や勝ち負けがあるわけではない。楽しむには、木と語らう心の余白が必要だろう。無口な木片を手に取り、己のゆとりを試してみるのもいい。この遊び、大人にも使い道がある。

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