HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sat, 22 May 2010 02:15:35 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:金星探査機 地球の未来知るために:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

金星探査機 地球の未来知るために

2010年5月22日

 日本初の金星無人探査機「あかつき」が二十一日、種子島宇宙センターから打ち上げられた。地球と「双子の惑星」でありながら、なぜ金星だけが過酷な環境になったのか。それが知りたい。

 「あかつき」は十二月に金星に接近し、高度三百〜八万キロの楕円(だえん)軌道を回りながら二年以上、観測データを地球に送り届ける。

 「明けの明星」「宵の明星」と呼ばれ、明け方や夕方に明るく輝く金星は地球とよく似ている。

 半径は約六千百キロ(地球は六千四百キロ)、太陽からの平均距離は一億八百万キロ(同一億五千万キロ)で、地球のすぐ内側の軌道を公転している。

 ところが表面の環境は地球とは似ても似つかない。金星の表面温度は四六〇度で「てんぷら油よりも熱い」(宇宙航空研究開発機構)。気圧は九十気圧で水深九〇〇メートルの地球の海と同じだ。

 現在の金星大気のほとんどは二酸化炭素で占められ、それによる温室効果で高温になっているとされる。地球も誕生直後には二酸化炭素が充満していたと考えられるが、どこかで地球と金星の運命が分かれた。金星を知ることは地球の未来を知ることにもつながる。

 一九六〇〜八〇年代、旧ソ連や米国が探査機を飛ばし、特に旧ソ連は金星表面にカプセルを着陸させ、写真撮影や表土の分析などを通じ基礎的データを得るのに成功しているが、金星の全体像を把握するには至っていない。

 「あかつき」は金星の大気上層に恒常的に吹いている秒速百メートルの「スーパーローテーション」と呼ばれる暴風の原因解明や火山活動の有無の調査などを目指す。

 「あかつき」に先立ち欧州宇宙機関(ESA)の探査機が二〇〇五年十一月に打ち上げられた。主に日本が大気の流れ、ESAが大気の化学組成の分析を行うなど補完関係にある。協力して金星の謎の解明に迫ってほしい。

 宇宙開発の中で無人探査は有人探査ほどの派手さはないが、わが国にとって独自性を発揮できる余地が十分にある。将来、月や火星の有人探査を行う際にも無人探査で培った技術は役立つ。

 「あかつき」と一緒に、太陽光の圧力で飛ぶ世界初の宇宙ヨットの実験機「イカロス」も打ち上げられた。燃料やエンジンを全く使わない推進システムで、一世紀前からSFの世界で構想されてきた。未来の惑星探査の可能性を大きく広げるものとしてわが国がリーダーシップをとっていきたい。

 

この記事を印刷する