韓国の哨戒艦が沈没した事件で、韓国は「北朝鮮製魚雷による爆発」という調査結果を発表した。核、ミサイル開発に続く、北朝鮮の深刻な軍事的挑発であり、いっそう孤立を深めるだけだ。
韓国の哨戒艦「天安」(一、二〇〇トン)が三月下旬、爆発して沈没し乗組員四十六人が死亡、行方不明となった。朝鮮戦争の休戦(一九五三年)以来、韓国軍の死者数では最大の惨事だ。
韓国調査団は現場から回収した魚雷の部品を分析し、推進体にあったハングル表記などから「北朝鮮の小型潜水艦による攻撃としか説明がつかない」と結論づけた。
調査には米英豪などの専門家も加え約二カ月かけた。韓国側は慎重を期し、即時の軍事的報復を自制したといえよう。
北朝鮮の国防委員会はただちに声明を発表して「でっち上げだ」と否定し、制裁には「全面戦争を含む強硬措置で応える」と述べた。現場海域へ調査団を派遣する考えも示した。無実だというなら、韓国側の証拠提示に対して具体的に反証すべきだろう。
事件があったのは、黄海上の境界線である北方限界線(NLL)の南側の韓国領海だ。NLL付近は、これまでも双方の艦艇の衝突が起きている「火薬庫」だ。
韓国の李明博政権は経済支援を続けた過去の政権とは異なり、「核開発をやめない限り、本格的な支援はしない」という立場だ。昨年十一月には黄海で南北が交戦し北朝鮮警備艇が大破した。
北朝鮮は経済が破綻(はたん)し、金正日総書記の健康不安もある。国民を結束させるため、常に軍事的な緊張が必要とされる。
今回の事件は北朝鮮が韓国に報復して軍事力を誇示する一方で、国内を引き締めるのが狙いではないか。こんな見方が有力だ。
韓国政府は国連安保理に提案し、制裁を求める考えだ。南北の経済交流も大幅に縮小されるだろう。日本と米国は韓国を全面的に支持すると表明した。
中国は哨戒艦沈没には明確な態度を示していない。だが、中国は「六カ国協議」の議長国であり、経済協力というテコを使って北朝鮮の軍拡を抑えられる立場にあり、国際社会に責任がある。
北朝鮮は核、ミサイル問題で既に厳しい制裁を受けている。軍事行動を拡大すれば、国際的な包囲網はさらに狭まる。
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