HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 50524 Content-Type: text/html ETag: "a772a-161b-fc25440" Expires: Wed, 19 May 2010 02:21:41 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 19 May 2010 02:21:41 GMT Connection: close 日航再建難航 公的資金の重みを忘れるな : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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日航再建難航 公的資金の重みを忘れるな(5月19日付・読売社説)

 甘い体質を引きずったままでは、生まれ変われるはずがない。

 法的整理に追い込まれてから約4か月、日本航空の再建策作りが難航している。6月末に裁判所に提出するはずだった更生計画の策定が、大幅にずれ込むという。

 合理化策を巡って、日航、管財人の企業再生支援機構、監督する国土交通省、債権者の金融機関の思惑が交錯し、明確な展望が描けていないことが最大の要因だ。

 日航には、1兆円規模の公的資金が投入される。再建に手間取って、思うような業績を上げられなければ、税金で穴埋めする事態になりかねない。関係者は、もっと危機意識を持つべきである。

 日航は4月末、更生計画の基礎となる路線削減計画を発表した。来年3月までに採算が合わない国内30、海外15の計45路線から撤退するという内容だ。

 会社更生法適用を申請した1月に示した「3年間で31路線」という計画に比べ、廃止路線を上積みし、実施時期を前倒しした。

 切り込み不足が指摘された当初案を見直すのは当然である。だぶついた路線・機材・人員を大胆に削減しなければ、3年後に過去最高益をひねり出すという日航の目標は、絵に描いた餅になろう。

 何より求められるのは、生き残りを可能とする新生JALの姿である。だが、新経営陣からは一貫した戦略が伝わってこない。

 例えば、海外路線だ。景気の動きに左右されやすく、業績悪化の元凶だったが、計画では、全日本空輸へのライバル意識から、欧米など主要路線を温存した。

 一方で、提携先には、太平洋路線の占有率で、米デルタ航空に比べて圧倒的に劣る米アメリカン航空を選んだ。

 体力を消耗させるだけの大規模な運賃割引は、旅客1人当たりの単価を上げて、赤字から抜け出すという方針に逆行している。

 情報公開にも後ろ向きだ。顧客離れに歯止めがかからないと指摘される中で、再生の行方を占う2010年3月期決算は、発表の時期さえ確定していない。

 一度は破綻(はたん)した企業であるという厳しい自己認識に欠けていると言わざるを得ない。

 気になるのは、政治の動きだ。廃止路線の地元自治体が反発を強め、参院選を控えた与野党が介入しそうな気配が広がっている。

 政治や行政が赤字空港を存続させるため、不採算路線を無理に維持したことが、日航の失速を招いた。それも忘れてはならない。

2010年5月19日01時44分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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