HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 21207 Content-Type: text/html ETag: "4c1e1d-52d7-66071340" Cache-Control: max-age=2 Expires: Mon, 17 May 2010 22:21:04 GMT Date: Mon, 17 May 2010 22:21:02 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
民主党はどうやら、鳩山由紀夫首相(党代表)と小沢一郎幹事長の「小鳩体制」を見直さないまま、夏の参院選に臨むつもりのようだ。
しかし、鳩山内閣の支持率は政権発足以来、下がる一方で、この週末の朝日新聞の調査では21%と、10%台が目前に迫った。小沢氏の幹事長辞任を求める声も76%と変わっていない。
このままの対応を続けて参院選を乗り切れると考えているなら、政権交代で日本の政治が大きく変わることを期待した多くの有権者の失望や怒りを、あまりに軽く見ているのではないか。
まず、小沢氏である。
自らの資金管理団体の土地取引を巡る政治資金規正法違反事件で、検察審査会から「起訴相当」の議決を受けた小沢氏は先週末、東京地検特捜部から再度、任意の事情聴取を受けた。
収支報告書の虚偽記載への関与を改めて否定したとみられるが、小沢氏はきのうの定例記者会見でも、具体的なやりとりは一切、明かさなかった。
小沢氏は近く衆院の政治倫理審査会に出席して説明する意向だ。しかし、政倫審は原則非公開で、報道陣の傍聴も認められない。証人喚問と異なり、偽証罪に問われることもない。
やましいことはないというなら、堂々と証人喚問に応じてもいいはずだ。小沢氏は「きちんとお話しすれば、必ず国民に理解していただける」というが、密室での弁明では説得力がない。
小沢氏は政倫審について、公開でも非公開でも「どっちでもいい」と語った。あくまで政倫審でというなら、公開は最低限の条件ではないか。
それにしても、今更の感が深い。
小沢氏は2月に自らの不起訴処分が決まった後、この問題は決着したとばかりに、野党や世論が求める国会での説明に一貫して応じてこなかった。
政倫審はこれまで疑惑の解明というより、幕引きの舞台として使われてきた。会期末まで1カ月を切ったこの段階で小沢氏が急に姿勢を変えたのも、参院選前に「みそぎ」を済ませておこうとの意図とみられても仕方ない。
一方、米海兵隊普天間飛行場の移設問題で「5月末決着」の公約が事実上破綻(はたん)した首相も、野党の退陣要求に応じる気配はない。辞めれば解決する問題でないのはもちろんである。だが、国会で「職を賭す」と言い切った首相の言葉を有権者は忘れていない。首相自身の政治とカネの問題もある。
両氏の政治責任をどう考えるのか。民主党内で論議が起こっていいはずなのに、表立った声が上がらないのも不可解な光景である。
首相と小沢氏、そして民主党全体が、それぞれの政治責任にどう向き合うかを、有権者は目をこらしてみている。それを忘れたら、参院選で手痛いしっぺ返しを受けることになる。
訪問販売やクレジット契約のトラブルなどをめぐって消費者が相談できる身近な窓口の態勢が整っていない。政権交代や消費者庁の発足を機に、強化への道筋を考えたい。
県庁や市役所などにある消費生活センター。多重債務を中心に相談件数は増えるばかりだ。消費者庁によると、全国の自治体に寄せられた相談件数は1998年度の計41万5千件から10年間で93万9千件へと倍増した。
ところが、消費生活センターの数は3割増、電話や面接で相談に応じる消費生活相談員の数は1割の増加にとどまる。消費者相談の部門全体に自治体が回したお金と一般職員の数は3〜4割も減ってしまった。
この間、財政難に苦しむ自治体は予算も一般職員も減らしてきた。全国の自治体全体ではどちらも1割ほど削減された。消費者相談部門の縮み方はそれを大きく上回り、真っ先に削られた姿が浮かび上がってくる。
そんな逆風のなかでも、態勢をむしろ強化した自治体がある。
「多重債務に強いまち」を掲げる盛岡市は、98年度に3人だった相談員をいまの13人にまで増やした。市の職員5人も交え、年間1500件の相談にあたる。「多重債務は自己責任といえるのか。経済的な災害ではないのか。貧困の問題に対応するのは自治体の責務だ」と考えたからだ。
滋賀県野洲(やす)市では、市役所1階の相談室に各部の職員が出向き、相談に来た人をたらい回しにしない。
多重債務者は税金や国民年金保険料、公営住宅の家賃などを滞納していることが多い。相談員は市役所内の税や福祉、教育、水道などの部署と連携し、その生活再建を助ける。相談員の生水(しょうず)裕美さんは「総合力を発揮できるのが自治体の強み」と話す。
両市とも弁護士や司法書士など外部の専門家ともしっかり連携している。
暮らしの知恵や商品知識が主体だったかつての相談から生活困窮者の支援や悪質商法の被害救済に内容が様変わりしたいま、政府や自治体は消費者行政という仕事の発想そのものを変える必要がある。
ただ相談を待つだけでなく、生活を脅かされた市民を見つけてその立て直しを図る積極的な対策が要る。生活保護の急増など自治体が抱える課題の背景に多重債務などがあり、その解決は自治体の本来の責務にも直結する。
大半が非常勤である消費生活相談員の待遇改善も欠かせない。正職員化や報酬の引き上げの検討は急務だ。
消費者庁と消費者委員会で、外部の専門家を交え、消費者相談について政府と自治体の役割分担、財政支援のあり方などの議論が始まった。重要な施策の手段として窓口を強化する方向へと知恵を出し合いたい。