HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 50257 Content-Type: text/html ETag: "a7cb0-15c0-1c6a8c40" Expires: Sat, 15 May 2010 02:21:41 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 15 May 2010 02:21:41 GMT Connection: close B型肝炎訴訟 国は和解協議で治療対策示せ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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B型肝炎訴訟 国は和解協議で治療対策示せ(5月15日付・読売社説)

 とりあえず和解協議は始まった。だが、実際に和解できるかどうか、道のりは極めて険しい。

 B型肝炎ウイルスに感染した人たちが、予防接種の注射器使い回しが原因だったとして国に賠償を求め、全国10地裁で起こした訴訟である。札幌、福岡両地裁が、判決によらず和解するよう勧告していた。

 政府は、鳩山首相も加わった関係閣僚会議で和解勧告に応じる方針を決め、14日にまず札幌地裁でテーブルに着いた。被害者救済の話し合いに、国が一歩踏み出したことは評価できよう。

 しかし、決まったのは「協議入りする」という一点のみだ。補償する範囲や金額など、具体案を国が示すには至らなかった。国と原告の主張の隔たりは大きく、和解協議の次の一歩は難しい。

 国はまず、過去の医療行政の落ち度を誠実に謝罪した上で、治療費用の不安解消策や治療法の研究開発を促進する方策などを、協議の場で示すべきだろう。

 原告側が評価できる肝炎対策を打ち出すことで、折り合える補償額や対象範囲も見えてくるのではないか。

 B型肝炎ウイルスは血液などを介してうつる。特に問題となるのは乳幼児期に感染した場合だ。

 キャリアと呼ばれる、症状の出ない感染状態が数十年も続いた後に、1割強の人が慢性肝炎を発症する。悪化すると、肝硬変や肝がんになる。

 感染経路として考えられるのはまず、出産時に起こる母子感染である。母親がキャリアでなければ予防接種が疑われる。

 母子感染の防止策がとられ、注射器が使い捨てになったのは、1980年代の後半からだ。

 それ以前に生まれた世代は、だれでも感染した可能性がある。キャリアは100万〜130万人いると推定され、気づいていない人も多い。

 注射器の連続使用が肝炎を広げる危険性については、50年代から認識されていた。この点で対応が遅れた国の責任は、先行した別の訴訟で最高裁が認定している。

 血液製剤による薬害C型肝炎ではキャリアの人に1200万円の補償を行っており、B型の原告団も同等の措置を求めている。

 だが、薬害C型と異なり、明確な原因証明が難しいB型肝炎で同様の補償を一律に行えば、兆単位の財源が必要になるとして、国は強い難色を示している。

 和解協議の場で、互いが納得のいく解決策を模索してほしい。

2010年5月15日01時09分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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