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5月15日付 編集手帳

 加藤(よし)さん演じるところの老人「辻本」が言う。〈人間は、してきたことで敬意を表されてはいけないかね? いまは耄碌(もうろく)ばあさんでも、立派に何人かの子供を育てた、ということで敬意を表されてはいかんかね?〉と◆かつて放送された山田太一さん脚本のテレビドラマ『男たちの旅路』の一場面である。「してきたこと」を見ず、「いま現在」のみを論じることほど、高齢者に残酷な仕打ちはあるまい◆少し前、「後期高齢者」という官製用語が世の人々から反発を受けたのも、この言葉に辻本老人の言う「敬意」がみじんも感じられなかったからだろう◆各政党で参院選に向けた政権公約づくりがヤマ場を迎えている。景気、雇用などとともに、高齢者が相応の敬意を表されながら安心して暮らせる社会保障の仕組みをこしらえることも公約の柱になる。財源の裏付けとして避けて通れない消費税率の引き上げと、正対するのか、逃げるのか――で、政権を担う覚悟のほどが測れるかも知れない◆ドラマが放送されたのは30年ほど昔である。はらわたを搾るように辻本老人の発した問いは、いまも生きている。

2010年5月15日01時18分  読売新聞)
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