パロマ工業製ガス湯沸かし器の一酸化炭素中毒事故で、業務上過失致死傷罪に問われた元社長らに有罪判決が言い渡された。製品の安全に、後々まで責任を持つ。すべての企業が肝に銘じるべきだ。
企業トップを断罪する判決を東京地裁で聞いた後、当時大学生だった十八歳の息子を失った母親が涙で声を詰まらせていた。
「息子は帰ってこない」「(初めて事故が起きた)二十年前に製品を回収してくれれば…」
息子は二〇〇五年十一月、東京のアパートで亡くなった。室内のガス湯沸かし器は、排気装置が作動しなくても点火するよう修理業者が不正に配線を変えていた。
同社の湯沸かし器では、点火しやすくするため、修理業者によるこんな危ない改造が横行していた。一九八五年から二〇〇一年までに一酸化炭素中毒事故で十五人が死亡していた。
元社長らもこんな事態を知っていた。なのに点検・回収もせず、マスコミなどで利用者に注意を呼びかけることもしなかった。事故は繰り返され、死ななくてもよい命がたくさん失われた。
判決は、製品の欠陥だけでなく、その後の使用状況まで責任を負うべきだと踏み込んで認めた。企業の社会的責任を考えれば当然だろう。あらゆる企業にあらためて自覚してほしいところだ。
公判で、元社長らが「経済産業省こそ、全国的に統一した事故防止対策を取ることができた」「ガス会社の方が事故防止の情報を持っていた」と責任を押しつけようとしたのは許されない。
自社製品が、安全に使われているのかまで企業が責任を持ってこそ、消費者もその企業の製品を信頼して使い続けることができる。
企業トップが責任を問われる製品事故は少なくない。三菱自動車製大型車による死亡事故では、元社長らの有罪が確定している。責任追及と同時に、同じような事故防止こそ大切だ。
パロマ事故を受け、消費生活用製品安全法が改正され、重大事故の場合、製造会社は発生を知ってから十日以内に国に報告することが義務付けられた。
息子を亡くした母親も〇八年、当時の福田康夫首相に「消費者のための行政機関を」と訴えた。その消費者庁は翌年できた。消費者被害があった製品の情報を集約し、公表する仕組みができた。
企業や国、私たち消費者も、悲しい教訓を生かさねばならない。
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