国内自動車メーカーの二〇一〇年三月期決算が出そろった。急速な業績悪化には歯止めがかかり、足元は固まった。反転攻勢に向け、エコカー開発や新興国での販売強化に取り組むときが来た。
主要八社の連結決算は、本業のもうけを表す営業損益で全社が黒字を確保した。純損益も六社が黒字。前期に続いて赤字だったマツダと富士重工業も前期と比べると赤字額は大幅に縮小した。
売上高は全社が前期より減少している。それでも利益が出たのは、人件費など固定費の圧縮や製造原価の低減でコスト削減を徹底的に進めたからだ。無駄を省き、筋肉質の体質になった各社は今後、景気が回復して売り上げが伸びれば、利益を大幅に伸ばせる体制が整ったと言える。
業績回復で土台はできた。次に進むべき道は二つある。ハイブリッド車や電気自動車などエコカーの開発を一層進めることと、経済成長が著しい新興国での販売の強化だ。
経済産業省は、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない「次世代自動車」が乗用車の新車販売台数に占める割合を、現在の10%未満から二〇年には最大で50%まで引き上げる戦略を打ち出した。メーカーの動きも進んでいる。三菱自動車が四月から電気自動車「アイ・ミーブ」の個人向け販売を開始、日産自動車は十二月に電気自動車「リーフ」を発売する。
日本や欧米の市場が大きく伸びるとは期待できない中で、新興国市場は重要度を増している。中国は昨年、米国を抜いて新車販売台数が世界一になった。インドでもモータリゼーションが進んでいる。性能や価格の面で、各国のニーズに合った車の開発や、現地生産体制の構築が求められる。
今後、世界の自動車市場には、新興国のメーカーも本格的に参入してくる。中国の比亜迪汽車(BYDオート)は、電気自動車を年内に米国市場に投入する。環境技術で日本メーカーは今のところ世界トップクラスにあるが、油断はできない。欧米の有力メーカーもエコカー開発に心血を注いでいる。新興国メーカーもいずれは日本メーカーのライバルになり得る。
世界同時不況に直撃された日本の自動車メーカーはこの一年、業績の立て直しに追われ「守り」の経営を余儀なくされた。しかし、今後は経営資源を集中させる分野を慎重に見極めた上で「攻め」の姿勢に転じてほしい。
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