HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 51168 Content-Type: text/html ETag: "ad63b-1669-104254c0" Expires: Tue, 11 May 2010 23:21:42 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 11 May 2010 23:21:42 GMT Connection: close 比次期大統領 汚職と貧困の撲滅が課題に : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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比次期大統領 汚職と貧困の撲滅が課題に(5月12日付・読売社説)

 フィリピンで9年ぶりに政権交代が実現する。任期満了に伴う大統領選で、野党・自由党のベニグノ・アキノ上院議員の当選が確実になった。

 アロヨ現政権下での汚職のまん延と貧富の差拡大により、フィリピン社会には政治不信と閉塞(へいそく)感が広がっていた。

 こうした現状の変革を求める有権者の声が、清廉なイメージを持つアキノ氏の勝利につながったと言えよう。次期大統領にとって、汚職撲滅や貧困対策への取り組みが、最大の課題となる。

 アキノ氏の父親は1983年、民主化運動のために、当時のマルコス独裁政権下の母国に帰国し、暗殺されたベニグノ・ニノイ・アキノ元上院議員だ。

 その後、大統領になったコラソン・アキノ氏は母親で、親子2代での大統領が誕生する。

 フィリピンでは、都市のスラムで生活したり、ゴミ投棄場付近に住み込んだりする人々に象徴される貧困層が、アロヨ政権時代に拡大した、と指摘されている。

 状況が悪化したのは、汚職の続発や縁故主義の跋扈(ばっこ)で、貧困層が顧みられなかったからだ。

 「汚職がなくなれば、貧困もなくなる」とアキノ氏が訴えたのも、そうした背景がある。

 アキノ氏が改革を公約した、一部の富裕家族が農地の大部分を所有している大農園制度も、富の再配分を困難にしている。

 大地主であるコファンコ家の出身だった母親も、大統領時代に実現させると言いながら、できなかった農地改革は、次期大統領にとって大きな試練となろう。

 改革を断行する上で、重要なのが国軍の存在だ。アロヨ政権下では軍人のクーデター未遂が3回も発生し、社会不安が増大した。

 軍最高司令官を兼務するアキノ氏にとって、軍部をしっかり掌握することが肝要だ。政権が安定してはじめて、貧困対策などに取り組めるからだ。

 東南アジア全体の安全保障にとり、フィリピンは重要な位置を占めている。

 民主化が高揚していた90年代、国内に駐留していた米軍を追い出した結果、支配していた南沙諸島のミスチーフ礁を中国軍に占拠された苦い経験がある。

 フィリピンは、9・11同時テロの発生後は、米軍の駐留を認めている。良好な米比関係の維持は、南シナ海に勢力を拡大する中国を牽制(けんせい)する上からも意味がある。

 次期大統領は、そうした現実を忘れてはならない。

2010年5月12日01時31分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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