HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 12 May 2010 01:15:46 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:アキノ新大統領 決別したい汚職と貧困:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

アキノ新大統領 決別したい汚職と貧困

2010年5月12日

 フィリピン大統領選で、ベニグノ・アキノ上院議員が圧勝した。両親とも民主化の象徴だ。その名声とクリーンさで幅広い支持を集めた。選挙で訴えた汚職・貧困社会からの「変革」を応援したい。

 「厳しい選挙戦に、家族を巻き込みたくない」。名家の息子は当初、周囲の出馬要請を固辞していたという。

 無欲とすら映るこんなエピソードで、さらに支持を広げたという。この国の人々が今、政治に何を求めているのかを物語っている。

 九年間政権を握ったアロヨ大統領だが、不正蓄財など汚職の噂(うわさ)が絶えなかった。民間の国際団体による昨年の「清潔度」は百八十カ国・地域のうち百三十九位と就任時の六十五位からひどくなった。

 アキノ氏の父親は、マルコス独裁政権と闘って暗殺された。母親は、その独裁政権を倒した一九八六年の「ピープルパワー革命」を先導したコラソン・アキノ元大統領だ。昨年亡くなった時は、十五万人が葬列を見送った。

 アキノ氏は国会議員を十年余務めたが、さして実績はない。元俳優のエストラダ前大統領や、スラム地区出身の大富豪ビリヤール氏ら貧困層に人気の候補と激戦が予想されたが、両候補とも金銭絡みの前歴や疑惑が浮上していた。

 東南アジアでいち早く民主化に進んだフィリピンだが、あの革命から四半世紀たっても混迷が続く。母親のコラソン元大統領も、マルコス打倒後の有力政治家らの対立を抑えられず、「革命」は尻すぼみになったからだ。

 アキノ氏が掲げる「変革」が、母親の思いを継ぐよう、人々は願っているはずだ。

 「汚職がなければ、貧困もない」ともアキノ氏は訴える。

 ある試算では、国家予算の二割が汚職に消えるという。汚職が減れば、金持ちだけが得をする社会と決別するのはもちろん、外国からの投資も進むはずだ。現在の投資額はベトナムの十五分の一。国内に産業が育たないから、国民の一割の約八百万人が海外へ働きに出る。東南アジアで上位だった一人当たり国民総所得もタイなどに抜かれ六位に転落した。

 日本はフィリピンの最大の援助国で、米国に次ぐ貿易相手国だ。経済連携協定(EPA)を結び、看護師・介護福祉士の候補者も受け入れている。

 「変革」が今度こそ実を結ぶよう、日本の手伝える分野も機会もあるはずだ。

 

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