サッカーには国民性が表れるという。ワールドカップ(W杯)に世界が熱くなるのはそのためだ。W杯南ア大会まで一カ月。日本代表チームにも「日本らしさ」を存分に発揮してほしい。
第十九回となるW杯南アフリカ大会は六月十一日開幕。厳しい予選を勝ち抜いた三十二チームが四年に一度の大会に集い、七月十一日の決勝まで一カ月にわたって六十四試合を行う。えり抜かれたチームが最高の技と力を出し尽くす夢舞台だ。今回は、初めてアフリカ大陸で開催される記念すべき大会ともなっている。
日本は一九九八年のフランス大会以来、四回連続の出場。十日には代表チームの二十三選手が発表された。これまでの最高成績は二〇〇二年日韓大会での十六強。今回はオランダ、デンマーク、カメルーンとのE組で一次リーグを戦う。いずれ劣らぬ強敵相手に日本チームがどんな戦いを繰り広げるのか、サッカーファンならずとも息をのんで試合の行方を見守ることになりそうだ。
各大陸予選を通過するのさえ至難の業であるW杯。一次リーグを勝ち抜き、さらに上位をうかがうのがどれほど難しいかは言うまでもない。そうした中では、結果もさることながら、いかに持ち味を出し切り、将来の飛躍へとつなげるかということもまた大事だ。
前回は一分け二敗で一次リーグ敗退だった日本。その後も世界の強国相手となると見どころのある戦いができていない。いささか気になるのは、「これが日本のサッカーだ」と言い切れるようなスタイル、戦いぶりが徹底できていないように見えるところだ。
日本は、速さと勤勉さを生かして走り勝つサッカー、相手の個の強さに全員で対抗するサッカーを目指してきている。それがすべてではないにしろ、ここで大切なのは、これまで積み重ね、磨いてきたもの、すなわち「日本らしさ」を出し切ることだろう。勝敗にかかわりなく、それはさらなる高みへの大きな一歩となる。
W杯の戦いは長い長い物語のようなものだ。何大会も何世代もかけて経験を積み、挫折も味わい、試行錯誤も重ねていかなければ、上位進出、優勝というクライマックスは見えてこないのである。まずは進むべき道を明確に示して、将来へとつながる希望を見せてほしい。それはサッカー界だけでなく、なかなか停滞を抜け出せない日本の国全体にとっても大いなる刺激となるだろう。
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