ギリシャの財政危機に揺れる欧州連合(EU)がユーロ安定に新たな基金の創設で合意した。資金繰り不安の解消にはプラスだが、財政規律を守らせる効果的な仕組みづくりが不可欠になる。
EUの臨時財務相会議は十一時間以上に及び、十日未明(日本時間同日午前)に合意した。週明けの金融市場が開く前に合意しなければ、ユーロが一段と売り浴びせられる事態を懸念したからだ。時間との競争になった欧州の切迫感が伝わってくる。
新たな基金の総額は七千五百億ユーロ(約九十兆円)に上った。うちユーロ圏十六カ国と欧州連合が合わせて五千億ユーロを負担し、国際通貨基金(IMF)も二千五百億ユーロを協調して支援する。
これはギリシャに対する三年間の支援総額千百億ユーロを大幅に上回る。同じように財政赤字を抱えるポルトガルやスペインなどにも危機が波及する懸念があり、市場に安心感を与える狙いだろう。
欧州による独自基金の創設は正しい一歩と評価したい。ただ、これでひと安心とはいかない。
根本にはユーロ圏が金融と財政を切り離している問題がある。金融政策を欧州中央銀行(ECB)に一元化し、単一通貨ユーロを使いながら、財政政策は各国の裁量に任されたままなのだ。
ドイツやフランスのような大国に裏打ちされた信用の下で欧州の政策金利もユーロの為替相場も安定していた。ユーロに加盟したために金利上昇や為替下落を心配しないで済んだギリシャは、いわば頼れる仲間の信用力に安住して放漫財政を続けてきた。
こうした「ただ乗り」現象を、どう未然に防ぐかが問われている。基金そのものは非常時の備えにとどまる。安全網としては役に立つに違いないが、むしろ重要なのは融資する際の条件だ。アメ玉だけでは、ただ乗りは止まらない。IMFが課す融資条件は最低限として、欧州独自の条件を検討すべきではないか。
加えて平時から各国の財政を監視する効果的な仕組みも必要である。ユーロ圏には財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内などとする加盟条件がある。違反には課徴金を課す仕組みがあるが、独仏でさえ守れていない。
赤字拡大は金融危機への対応で不可避だったが、それはそれとして実効力ある平時の規律枠組みも検討すべきだ。問題を抱えるたび粘り強く議論し、解決してきた欧州の強みを発揮してほしい。
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