HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 61850 Content-Type: text/html ETag: "1001a0-15b2-630cddc0" Expires: Sat, 08 May 2010 21:21:42 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 08 May 2010 21:21:42 GMT Connection: close 英総選挙 伝統の2大政党制に試練の時 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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英総選挙 伝統の2大政党制に試練の時(5月9日付・読売社説)

 英国の総選挙で与党・労働党が敗れ、野党の保守党が第1党に返り咲いた。第3党の自由民主党は事前の予測に反して議席を伸ばせなかった。

 しかし、保守党も過半数に届かず、新政権の姿は見通せない。

 2大政党のいずれかが過半数を制し、即座に単独で強力な政府を樹立する。この伝統ある英国の2大政党制が揺らぎ始めたということだろう。

 過半数に届く政党がないのは、比例代表制を導入している国では何も珍しいことではない。だが、単純小選挙区制を採用する英国では36年ぶりだ。

 保守、労働党のどちらが政権を担うにせよ、自民党や少数政党との連立工作が必要になる。円滑に新政権を発足させられるか、試練の時と言えるだろう。

 今選挙で13年ぶりに第1党が交代した一因には、ギリシャの財政危機が引き起こしたユーロ危機がある。ユーロ加盟に反対し、欧州連合(EU)から政策上の独立性を取り戻そうとする保守党の追い風になったのは間違いない。

 英国の就業年齢人口に占める移民の割合は14%にまで増加した。保守党が雇用情勢の悪化につながる移民の増加に歯止めをかけると訴えたことも、有権者の不安な心に届いたのだろう。

 しかし、対EU、移民政策を除けば、2大政党には政策上の際だった差異がない。

 労働党も保守党も、今や自由競争と社会的公正の両立を目指すようになった。今回、一方を大勝させるほど民意が大きく振れなかったのは、2大政党が有権者に「選択の幅」を与えられなかったせいでもあろう。

 戦後は9割を超えていた2大政党の合計得票率は、前回2005年の総選挙で7割を切り、今回さらに減った。こうした民意の多様化が議席に反映されにくいのが、単純小選挙区制である。

 このため、選挙制度改革を求める動きも出てきた。

 労働党は優先順位をつけて複数候補に投票する小選挙区制へ、自民党は比例代表制への転換を主張している。連立協議では、選挙制度改革も議題に上るだろう。

 今選挙戦では米国流のテレビ討論が初めて導入され、自民党党首の人気が一時、急上昇した。それが結果につながらなかったのも、今の選挙制度と無縁ではない。

 政権交代可能な2大政党制の入り口に立ったばかりの日本も、その範とした英国政治の変化をしっかり見つめる必要があろう。

2010年5月9日01時08分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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