ギリシャの財政危機を引き金に世界の株価が急落した。信用不安は他国に飛び火する懸念もある。欧州連合(EU)と関係機関は危機の連鎖を食い止めるために、万全の方策を講じるべきだ。
六日のニューヨーク株式市場はギリシャ危機に加えて証券会社による誤発注の疑いも加わって、ダウ工業株三十種平均が急落した。東京市場も平均株価が一時、ことし最大の下げ幅を記録した。
先進七カ国(G7)財務相が緊急電話会議に動く一方、日銀も短期金融市場に資金を供給し、緊張が高まった。
株価が世界で急落したのはギリシャの財政危機が深まっているためだ。欧州のユーロ圏十五カ国と国際通貨基金(IMF)は財政再建策を条件にギリシャに三年間で総額千百億ユーロ(約十三兆円)を融資する救済策を決めた。
ところが、ギリシャが厳しい緊縮財政を実行できるかどうか疑問視される一方、財政赤字を抱えたポルトガルやスペインなどに危機が連鎖する懸念もあって、単一通貨であるユーロが売られた。日本市場では輸出減要因になる円高ユーロ安が嫌われた格好だ。
ギリシャに対する悲観論は収まっていない。「最終的に債務不履行(デフォルト)が避けられない」とみる専門家もいる。そうなれば、ギリシャ国債を保有する欧州金融機関が打撃を被り、信用収縮が欧州全体に広がりかねない。
本来、放漫財政を続ければ長期金利が上昇、為替も下落して自動的に規律維持を迫られる。ところが、ギリシャはユーロ導入によって金利と為替の安定を享受しつつ放漫財政を続けてしまった。
単一通貨ユーロが財政規律の緩みを覆い隠してきたともいえる。こうした問題点はユーロ導入前から指摘されていたが、今回の危機であらためて表面化した。
金融政策を欧州中央銀行(ECB)に一元化して単一通貨を導入するなら、原理的には財政もECBの政策運営に見合うように規律を維持しなければならない。残念ながら、ギリシャは失敗した。
小国の放漫財政がユーロ圏全体に悪影響を及ぼしている今回の危機は、金融を一元化する一方、財政は各国の自由裁量に委ねたユーロ圏の制度設計自体に欠陥があった可能性を示唆しているのではないか。
欧州は各国に財政規律を守らせる効果的な方策を早急に検討すべきだ。市場は次の標的を探している。時間との競争でもある。
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