国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、高まりを見せる核軍縮機運が軌道に乗るか占う場になる。核兵器を持つ国と持たない国の対立は深いが、NPT体制の強化は急務だ。
核保有国の米国、ロシア、中国、英国、フランスは五日、共同声明を発表し、「核廃絶に向けた核軍縮へ持続的に努力し責任をもつと再確認する」と述べた。核実験の一時停止も守ると明言した。
オバマ米大統領が昨年四月に「核なき世界」の実現を提唱して以来、この一年活発な動きが見られた。核を持つ五大国は率先して軍縮に取り組み、国際社会への模範を示す義務がある。
米ロ両国は四月に調印した新しい戦略兵器削減条約を早期に批准し、核弾頭や運搬手段の削減に着手すべきだ。中国には核の情報を説明し、透明性を高めるよう求めたい。
だが創設四十年のNPT体制にはほころびが目立つ。インド、パキスタンはNPTに加盟せず核兵器を保有した。北朝鮮はNPT脱退を宣言した。この三カ国は今回の会議も欠席している。
会議の焦点の一つは中東地域の核問題だ。イランは国際社会の非難を無視して、ウランの高濃縮を続けている。アハマディネジャド大統領は会議で演説し、「平和的な核利用の権利がある」と反論し核開発を続けると明言した。
中東のもう一つの懸念は、NPTに加盟せず、核兵器を保有しているといわれるイスラエルの存在だ。五大国の声明では、中東の非核化地帯創設に言及した一九九五年会議での決議の履行に努力するよう求めた。
新興国には原子力発電に関心を持つ国々も多く、核保有国が燃料を独占しているとしてNPT体制の不平等さに不満を漏らす声が根強い。
またイランの核に批判が集中すれば、イスラエルの核疑惑を警戒するアラブ諸国の反発を招き、会議が紛糾する恐れもある。
NPT加盟国はイランがウラン高濃縮を中断するよう圧力を強める一方で、イスラエルを視野に入れた中東の非核化の論議にも本腰を入れるべきではないか。
会議の時期に合わせて、広島、長崎両市長や被爆者代表らがニューヨークを訪れている。被爆者らは講演や映画上映などを通じ核の悲惨さを訴えた。国際政治とは別の、人間の視点に立った呼び掛けが「核なき世界」への大きな支えとなる。
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