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読売経済提言 政策を一新し停滞を打開せよ(5月7日付・読売社説)

 経済効果の少ないばらまきで財政を悪化させ、成長回復に向けた確かな処方(せん)もない。鳩山政権による経済運営の無策ぶりは、もはや看過することができない――。

 経済政策を大転換するよう求めた読売新聞の緊急提言は、こうした問題意識に基づいている。

 選挙の勝利を優先する大衆迎合政治と、マニフェスト(政権公約)至上主義が、鳩山政治の最大の問題といえよう。

 21世紀を通じて日本の経済社会を安定させ、持続的な成長が可能となるよう、鳩山首相は本社提言に沿った責任ある経済政策を実施すべきである。

 ◆公約が政治をゆがめる

 日本経済は、世界同時不況の荒波を乗り切り、ようやく景気が持ち直してきた。だが、つかの間の明るさに安心してはならない。

 マクロ経済全体で需要は30兆円足りない。物価に下落圧力がかかり、デフレが慢性化している。

 エコカー減税など、前政権が残した景気対策もそろそろ息切れして、今年半ば以降には成長が減速するとの見方も強い。

 今こそ、景気下支えに万全を期さねばならないのに、肝心の経済政策は的はずれだ。公共事業を罪悪視した「コンクリートから人へ」は、その典型といえる。

 今年度予算で景気刺激効果の高い公共事業を2割も削った。公共事業を頼みとする地方経済への打撃は大きいだろう。

 反面、子ども手当など、ばらまき型給付に巨額の予算を割いた。家計への直接給付は貯蓄に回り、景気浮揚の即効性は期待しにくいのに、恒久的な財源のあてもないまま、公約実現を優先させた。

 交通網の高度化や学校の耐震化など、インフラ(社会基盤)投資は成長や生活の安全・安心につながる。無駄なハコ物と同一視せず、整備を進める必要がある。

 そのための財源確保の一策として、無利子非課税国債の活用はどうか。相続税を減免するものの利払い負担がないため、財政を悪化させることもない。約30兆円とされるタンス預金を吸い上げて必要な事業に使えば、一石二鳥の効果が期待できよう。

 ◆安心は雇用の安定から

 国民の最大の不満は「経済的なゆとりと先行きの見通しがない」ことだという。内閣府の世論調査で、ほぼ半数がそう答えた。

 手当をばらまくだけでは、不安は解消しない。働きたい人に仕事を用意し、自ら生計を立てられるようにすることが、安心の第一歩だ。雇用が安定すれば、消費拡大など経済活性化にもつながる。

 高齢化でニーズの高まる医療・介護分野は、雇用拡大の面でも有望だ。しかし、仕事がきついうえに、給料が安すぎるとして、現場を去る人が多く、慢性的な人手不足に陥っている。

 魅力のある仕事にするため、処遇改善が求められる。公費による支援の拡充などを図るべきだ。

 病気や高齢で働けない人を支える社会保障制度の強化も急がねばならない。制度の青写真をきれいに描いても、裏付けの財源がなければ絵に描いたモチだ。

 少子高齢化のため、黙っていても社会保障費は毎年1兆円ずつ増える。これを賄い、持続可能な制度に改めるには、税収の安定している消費税率の引き上げは避けられない。

 鳩山首相は「消費税率凍結」を撤回し、早急に具体的な論議を開始すべきだ。税率は現在の5%から、まずは10%への引き上げを目指す必要がある。

 ◆新興市場でどう稼ぐ

 日本の国際競争力や、1人あたりの国内総生産(GDP)は、1990年代前半には世界のトップクラスだった。しかし、今はともに20位前後に沈んでしまった。

 高齢化と人口減少で、今後ますます経済規模の縮小が進む恐れもある。衰退を防ぐには、まず外需でしっかり稼がねばならない。

 狙うべきは新興国で拡大する新たな中間所得層や、鉄道や発電などのインフラ整備だろう。

 昨年末、中東・アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所建設をめぐる受注競争で、政府の全面支援を受けた韓国企業に日本勢が敗れた。官民が協力して新興国市場を攻略する新たな通商戦略を練らねばならない。

 中国をはじめとした新興国企業の台頭は著しく、日本企業の勝ち残りは容易ではない。現に、先行していたはずの薄型テレビで、韓国メーカーにシェア(市場占有率)を奪われている。

 海外よりも高い約40%の法人税の実効税率が企業の活力を奪っている。欧州や中韓なみの30〜25%を目安に、引き下げるべきだ。

 省エネや環境など日本が得意とし、成長が期待できる分野の活性化が重要だ。投資・研究減税などで企業の努力を後押ししたい。

2010年5月7日03時00分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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