子どもを授かった時、元気に育ってくれればいいと願うだけだったのに、親というのは身勝手なもので欲が出てくる。成長するにつれて、他の子どもと比較をして、勉強は人並み以上に、スポーツにも秀でてほしい…と▼勉強はともかく、読書をする習慣をつけさせたいと考えている親は多いはず。でも、本を読まそうとして反発された経験はないだろうか。詩人のねじめ正一さんは、子どもの本の敵として三つを挙げる▼それは、「常識」「理屈」「成熟」。ねじめさんによると、「いい子」に育てようとする大人はこの三つが大好き。読ませたい本には、この三つのどれかが入っているという。痛いところを突かれたな、という思いがした▼<常識の行き着くところは硬直です。理屈の行き着くところは妥協です。成熟の行き着くところは凡庸です。私は、たましいのやわらかい子どもに、この三つだけは与えたくないと、心底思っています>(「ぼくらの言葉塾」)とねじめさんは厳しい▼本を好きな子どもに育ってほしいと願っているのに、親が理屈や常識を押し付け、逆に遠ざけてしまっているとしたら…。こんな悲しいことはない▼きょうはこどもの日。いつも忙しいお父さんが、読み聞かせをする家庭もあるだろう。親の好みを強いてないか。立ち止まって考えると、子どもの世界はぐんと広がるかもしれない。