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井上靖が5月の曖昧(あいまい)さを随筆に書いている。〈春の百花を咲き誇った饗宴(きょうえん)は終(おわ)ろうとし、夏の烈(はげ)しい光線はまだ訪れて来ません……私は、春でも夏でもない、どっちつかずのこの短い季節が好きです〉。大作家の感性は、中ぶらりんを中庸の妙と受け止めた▼どっちつかずの短い季節――。今の鳩山首相には痛い言葉だろう。春でも夏でもないこの時期に、普天間問題の期限を切ったのはご自身である。あと4週。迷走の果てが失望では、政治責任という「烈しい光線」にさらされる▼最低でも県外のはずが、遅すぎる訪問で「最低」にも及びませんとわびた首相。県内移設に反対する9万人集会の後である。次は「県外」を頼む徳之島の首長に会うという。こちらも島を挙げての抗議の後だ▼後手ばかりで、成算があるとは思えない。どう動いても、手は尽くしたという言い訳が透ける。そもそも沖縄で安保を説く前に、この島の重荷を米国に説くのが先ではないか。その上で、駐留米軍の見直しについて話し合うべきではないのか▼こんな時に本音を言い合うための「同盟」であろう。能天気な八方美人は、八方ふさがりや八方破れにつながる。曖昧に味があるのは四季の移ろいであって、外交のどっちつかずは危険この上ない▼こどもの日は母に感謝する日でもある。当然、首相も思いを新たにしよう。命がけと言うなら、沖縄と徳之島の子どもたちのためにかけてほしい。ゆめゆめ米国の代理人として、あてもなく南の島を訪ね歩くことなかれ。それでは子どもの使いである。